「新井奥邃を端緒として田中正造、そして森有礼へと調査を進めていくと、彼らの中にはスウェーデンボルグ神学に源を発する普遍的なキリスト教思想が脈々と受け継がれ、それが明治期日本の思想形成にも無視できない影響を与えていたことを知ることができる。これまでの日本キリスト教史が見落としていたこの大きな伏流の存在を、スウェーデンボルグ神学の立場から明らかにするのが、本書の第一の目的である」(はじめに)
明治・大正期の日本人に深い影響を与えた稀有な思想家、新井奥邃。彼の思想の原点には、18世紀の天才スウェーデンボルグの神学が存在していた。
奥邃と深い精神的関わりを持った田中正造、森有礼――彼らの生涯をたどりながら思想を読み解き、その宗教思想に通底するスウェーデンボルグ神学の影響について論考。日本人の心とスウェーデンボルグ神学の意外な接点を明らかにした意欲作。
わたしたちの知らない、もうひとつの明治キリスト教史。
目次
第一章 新井奥邃の生涯
第二章 奥邃の思想とスウェーデンボルグ神学
第三章 新井奥邃と一九世紀アメリカの宗教界
第四章 新井奥邃のスウェーデンボルグ観
第五章 日本初代の文部大臣、森有礼
第六章 森有礼の宗教思想と新井奥邃
第七章 明治期のキリスト教と森有礼
第八章 田中正造と足尾銅山鉱毒事件
第九章 田中正造の宗教思想と新井奥邃
第十章 明治以降のスウェーデンボルグ神学受容史(電子書籍版初出)
第十一章 日本人の宗教意識とスウェーデンボルグ神学
瀬上正仁(せのうえ・まさひと)
昭和29年に宮城県塩釜市で生まれ、仙台市で育つ。
昭和55年に山形大学医学部を卒業後は、仙台市内で整形外科の診療に従事、専門の脊椎外科手術例多数。
平成25年に仙台市内に「瀬上整形外科医院」を開業、現在に至る。
日本整形外科学会の脊椎外科認定医。
高校時代から神道家の勝又正三師に師事し、師亡き後は師の「魚と水の会」を継承。医業の傍ら、神道を主体とした東洋思想とスウェーデンボルグ神学との関連について研究を重ねている。
日本スウェーデンボルグ協会(JSA)創設当時の運営委員。
〈著書〉
『知られざるいのちの思想家 新井奥邃を読みとく』(分担執筆、春風社、2000年)
『明治のスウェーデンボルグ─奥邃・有礼・正造をつなぐもの』(春風社、2001年)
『魚と水─ある天才宗教家 霊的体験の記録』(編著、著者は勝又正三師、春風社、2001年)
『仏教霊界通信─賢治とスウェーデンボルグの夢』(春風社、2003年、初版)
『スウェーデンボルグを読み解く』(分担執筆、春風社、2007年)
『宮沢賢治とスウェーデンボルグ─日本仏教の未来を見つめて』(22世紀アート、2018年、電子書籍)
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