「連鶴の職人」 

 

いろとりどりの折り鶴の饗宴─ 

 

東京都在住・折り紙作家

五味 建雄(ごみ たつお)



 美しいフォルムで折り紙の世界を格段に広げた折り紙作家の五味建雄さん。見る人のこころを揺さぶる数々の作品は、色とりどりの和紙に、まさに生命を吹き込もうかという意気込みで制作されている。つまり、物としての折り紙ではなくて、そこに何か、とても知的な原動力が働いているという「形」であり、その「形」はひとつの芸術作品として見ることができる。

 

 その最高峰にあるのが、1枚の和紙からいくつもの折り鶴を途切れないように作る「連鶴」という手法である。作者は言う。「連鶴のやり方は無限にある。これだけバリエーションを持っているのは私だけです」と。その自信に満ちあふれた言葉に濁りはない。この連鶴は、教わったことをそのまま踏襲するのではなく、山折りを谷折りにしたり、切り込みの深さを変えたりという工夫を重ね、ようやくひとつの形となるという。

 

 鶴とは、古来から民間信仰の対象となってきた日本人としては馴染み深い鳥で、縁起を担ぐ動物として、亀とともに親しまれてきたし、現在でも「鶴は千年、亀は万年」という言葉通り、親しまれ続けているのだが、実は鶴は霊鳥でもあって、有名な物語「鶴の恩返し」では、美しい女性となって現われるのは周知の如くだし、吉鳥(幸福を呼び込む鳥)としても崇められてきたのである。

ところで「連鶴」の“連”とは「連なる」の意であり、これもまた連綿と幸せが続くという意味合いを持っているから、それを折り鶴が担うということは、幸福というよりもむしろ至福とでも言わんばかりの造形だろうと思われる。これを担っているのが五味さんの創作折り紙なのであり、それはまた、造形作品でもあるのだ。

 

 まさに、名人の創作する創作折り紙の世界に人々は魅了される。素晴らしい作品群である。

 

文/菊地 道夫

 


Q & A


 

○ プロフィールについて

 

―幼少期はどんな少年でしたか。

 

五味:比較的おとなしい消極的な性格で、体育はどちらかというと好きではありませんでした。中学生のときに体育大会で全校マラソン大会では優勝したことがあります。

 

―なぜ作家を目指したのですか。

 

五味:定年を迎えて、その後の余暇をどのように過ごすかが大きな問題でした。そこで、折り鶴を始めたところ、折り鶴の奥深さに魅せられて、はまり込んでしまい、今日に至っています。

 

―作家になるまでの経緯を教えてください。

 

五味:まず、日本和紙工芸協会、さくら手工芸文化協会作品展に入選し、続いてHAC美術展に入選しました。さらには新院展、日昇展に入選。そして東北震災支援ギャラリー展、オリンピック記念展等に出展、その他多くの美術展で入賞をしました。

 

―五味氏にとって、多大な影響を受けている方がいれば、教えてください。また、ご自身では具体的にどのような影響を受けたと思いますか。

 

五味:折り紙会館(東京都文京区湯島)に行き、いろいろな作品を見て感銘を受け、作品を持ち帰り折り方を研究し、折り紙会館の各先生の指導を受けました。そして技術を習得し、独自の折り紙作品を作るようになったのです。また、平成22年には、財団法人社会通信協会認定生涯学習2級インストラクターの資格を取得しました。

  


 

○ 作品について

 

―アーティストとして活動されてきた五味氏にとって、折り紙アートはどのような意味を持っていますか。

 

五味:折り紙は、日本に古く(平安時代)からある日本特有の庶民アートであり、外国には例のない技術なので、多数の方に見てもらい、広めて行きたいと思います。また、日本の折り紙を多くの海外の人たちに知ってもらい、日本をアピールできればと考えています。

 

―五味氏が思う折り紙アートの定義があれば教えてください。

 

五味:日本の折り紙は歴史が長く、先人たちの努力で日本独特の庶民アートとして発達してきました。現代になって折り紙の技術が進歩し、多彩になってきました。これを後世に伝えてゆき、世界に広めていきたいと思っています。

 

―作品の制作時間について教えてください。

 

五味:全紙(60cm×90cm)ですと一ヶ月くらい、半切(60cm×45cm)で、15日くらい、全紙の6分の1(30cm×30cm)で10日くらいです。

 

―平面的な絵画よりも作品に費やする時間や製作工程が多いのではないかと思います。時間を捻出するためにやられている工夫などあれば教えてください。

 

五味:作品を制作するにおいて合理化することは許されません。どんなに時間がかかろうと問題にしてはいません。

 

―作品を制作するとき、どういったところからイメージを膨らませていくのでしょうか。それともひらめきの要素が強いのでしょうか。

 

五味:連鶴を通じて、鳥や花、立体造形を表現したい。

 

―作品に対してどのような気持ち、イメージを込めているのでしょうか。社会的なメッセージが込められた作品などもあるのでしょうか。

 

五味:第一に、日本人の心を表現したいのです。第二に、作品を通じて世界の平和をアピールしたい。第三に、作品を通じ、人と人との繋がりを求めて行きたいと思っています。

 


 

○ 製作行程について

 

―五味氏の制作工程を教えてください。また、制作してゆく中で、直観だけを頼りにしている部分はどういったところでしょうか。

 

五味:まずは作品の発想をすること。次に制作のための図面の制作を行います。そして正確なカッティングをし、図面の通りに正確に折るのです。特に自然、その他の事象をヒントに、独自のモチーフを考えることが重要です。

 

○ 個展について

 

―前回開催した個展はどのようなコンセプトでおこなったのか教えてください。

 

五味:折り紙は、一般には単なる遊びの世界のように見られているところがある。しかし私は、折り紙の繊細さと、アートとしての芸術性を追い求めています。

 

―五味氏の個展の所見を教えてください。

 

五味:折り紙(連鶴)の奥の深さ、制作技術と芸術としての発展を追求し、多くの人々に広めて行きたいと思います。

 

○ 今後の活動について

 

―今後の活動予定を教えてください。

 

五味:可能であれば全国を巡回し、連鶴の技術を広めていきたい。また、多くの外国の人々に日本の折り紙、特に連鶴の素晴らしさを広めたい。

 

―今後、制作したいテーマやコンセプトを教えてください。

 

五味:折り紙を通じて仲間つくりをし、多くの人と係わりあいを持ちながら人生を楽しく生きるということです。

 


 

○ インタビュー閲覧者へのメッセージをお願いします。

 

五味:先にもお話ししたように、折り紙は日本独自に発展したものであり、特に明治以降に折り紙の技術が発展しました。この、日本の庶民芸術を、多くの人々に広めてゆきたい。皆様、日本独自の庶民芸術を楽しんでください。