「風景写真がアートになる日」
─ありのままの自然を多くの人に見てもらいたい─
インタヴュー :
山本 貴一 (写真家)
風景写真は好きですか?と、聞いてみると意外とシビアな返答が返ってくることが多い。
その多くは、「良さが分からない」、「綺麗に写ってるなとは思いますが」、「実物の方が凄そう」などだ。たしかにそういう作品も少なくない。
だからこそ、実体験を言わして頂きたい。
風景写真が理解できないという方がいるならば、ぜひ写真家・山本貴一氏の作品を見てほしい。
日本には、約6.5万人の写真家がいる。
日本に住む雇用、非雇用を含め、コンテストなどにエントリーしている写真家の数は、約7万人いると言われている。
さらにコンテストなどで輝かしい結果を残した写真家は、一握りだろう。
その中に、秋山正太郎先生、川口邦雄先生と出会い、独学の道を貫き、芸術にした風景写真家の天才がいることをご存知だろうか?
インタヴュー : 山本 貴一 (写真家)
山本 貴一 77歳
昭和14年、東京都文京区小石川に生まれる。高校2年で初めてカメラを手にし、すぐにコンテストで2位を獲得。その後、秋山正太郎先生、川口邦雄先生より指導を受け、富士フイルム他、全国規模のコンテストで多数の賞を受賞。個展もまた多数開催している。風景写真を芸術作品にできる数少ない写真家の一人である。日本風景写真協会会員。
インタヴュー :海野 有見
写真&テキスト:向田 翔一
これは、山本 貴一氏がこれまで語ることのなかった自然への想いである。
山本貴一(以下、山本):よろしくお願いしますね。
凛々しい表情と綺麗な瞳が印象的な素敵な人だ。
— 本日はよろしくお願いいたします。
インタビュー当日は、個展の開催中であった。個展会場である円通寺へ向かう。良いエネルギーが漂っている。すぐに飛び込んできた作品の数々。
フジフイルム受賞作品を含む数々の芸術写真と美しい本堂のコラボレーションは、言葉にはできない感動がある。
— 素晴らしいですね。
山本:人口的ではない、ありのままの自然を多くの人に見てもらえたら嬉しいですね。
地上の陰と陽を見極める冷静な眼差しは、70歳を過ぎた今も進化し続けている。
風景写真を素敵な作品にするコツとは
ー まずやっぱり聞きたいのは、どうしたこれほど素敵な作品が撮れるのですか?
山本:ストレートですね(笑)。そうですね、素敵な作品かどうかはわかりませんが、私自身が納得できる作品を作るために心掛けてくれることはありますよ。
ー はい、ぜひ教えてください。
山本:写真の中に季節感はあるか、ポイントはあるか、ドラマはあるかなどを考えて撮るようにしています。
ー なるほどー。言葉にするとシンプルですけど、それが一番難しいんですよね。
山本:そうかもしれませんね。なので、撮影に行ってから考えるのではなく、普段から風景を見て、感じて、四季のわずかな変化にも敏感になっておくことは本当に大切ですよね。
ー ですね。うーん、やはり一朝一夕でできるものではないわけですね。がんばります。
山本:あとは、撮りたい瞬間が訪れるまで待ち続ける。
ー おー、これまたできそうでできない。
山本:意外とできる人は少ないのかもね。でも、これも大切。焦らない。先ほども言いましたが、四季の移ろい、風景の動きが大事なんだ。だから、人口的な水辺の波紋や人間の足跡などもよくない。自然が普段の動きになるのを待ち、さらにドラマが訪れる瞬間を待つ。
ー はい、まずは意識して、心掛けてみます。
山本:がんばってください。
一同(笑)
山本 貴一氏のルーツに迫る
ー はじめてカメラを手にしたのはいつ頃でしたか?
山本:カメラをはじめて手にしたのは高校2年生の時だったかな。母からのプレゼントだったんだ。それからすぐに、雪祭りを撮影して、コンテストに応募したらすぐに賞を手にしたんだ。そうなると、カメラが益々好きになっていってね。だから、夢中になるまでには、そう時間はかからなかったかな。
ー すごいですね。そんなことがあるんですね。
山本:いやぁ、自分でも驚いたよ(笑)。それから、すぐに学校に写真部まで立ち上げたよ。
ー おー、当時の熱量がヒシヒシと伝わるエピソードですね。
山本:そうだね、若かったよ。それからは、カメラにひたすら没頭し続ける日々だね。新しいカメラも次々に試した。30代のころになって、秋山正太郎先生に出会った。
ー 巨匠との出会いですね。
山本:そうだね。人物やヌードの面白さを学んだんだ。今、思い出してみても良い経験だったと思う。
ー そして、その後に川口邦雄先生に出会ったわけですね。
山本:そうそう。川口邦雄先生との出会いもまた良い経験だった。特に、今後の展開に大きく決定を与えたっていう意味では最大級だね。
ー おー。川口邦雄先生といえば、山の写真が有名ですよね。
山本:そう、やっぱり私には風景が合っていると思ったね。そこからは、完全に独学。今は、技術などはもちろんだけど何より、四季の移ろいや風景の動き、ドラマ性が大切だと思ってるよ。
今、撮りたいアイデア
ー 今、撮りたいアイデアがあったら教えてください。
宮川:私が今住んでいる地域に注目しているんだ。ここ、新潟県十日町市やこの辺りに住んでいる人々は、信濃川に助けられて生きているんだ。
ー 自分が生活している地域への感謝、自然への感謝。すごく大切なことですね。
宮川:そうだね。信濃川のおかげでお米もすごく美味しい。だから、信濃川の生活環境をテーマにしたものを撮りたいんだ。
ー おー。
宮川:でも、ただ川の写真を撮ってもつまらないでしょ。その川に助けられ、自然と共に生きていく人々の姿や共鳴していく心の部分を感じて欲しいんだ。
ー それは、楽しみですね。完成したら、また是非拝見させてください。
宮川:わかりました。完成したらお知らせしますね。
ー 楽しみにしております。本日は、ありがとうございました。
最後に上手に撮影するテクニックについて聞いてみた。
35ミリのマウントを使って、マウントを覗きながら、移動してゆく。そうすると、不思議とカメラで覗き込むよりもずっと、テーマやドラマが湧いてくる。これで大きな失敗はなくなった。撮影用の服のポケットには必ず入れている。これで上手に撮れるかは、わからないけど試してみて(笑)。
プロフィール
山本 貴一 77歳
昭和14年、東京都文京区小石川に生まれる。高校2年で初めてカメラを手にし、すぐにコンテストで2位を獲得。その後、秋山正太郎先生、川口邦雄先生より指導を受け、富士フイルム他、全国規模のコンテストで多数の賞を受賞。個展もまた多数開催している。風景写真を芸術作品にできる数少ない写真家の一人である。日本風景写真協会会員。