〈旅〉の職人」 

 

歴史への〈イメージ〉が創り上げた史実─ 

 

北海道在住・作家

新川 寛(にいかわ ゆたか)



梨の花Ⅱ - 評論と随筆:500円 税込み(電子書籍)
梨の花Ⅱ - 評論と随筆:500円 税込み(電子書籍)

 “史実”という概念がある。むろん史実とは歴史的な事実のことを指しており、歴史学においてはこの史実を構成することが最重要課題となる。したがって歴史はともすると無味乾燥になりがちである。しかし、これが旅行記や航海記となると、歴史へのイメージはかなり違ってくる。ましてやそのテーマが遺跡や遺物となると、博物学的なイメージの集積となるから、これを追求することそれ自体が興趣の湧く事柄となる。

 

 著者はポルトガル、インド、モロッコに亘って繰り広げられる様々な歴史的要素を導入しつつも、その土地に存在する遺跡・遺物に終始目を向け、これを〈イメージ〉の産物として的確に描写してゆく。まさにそれは「歴史の痕跡」や「歴史の爪跡」としての遺跡・遺物なのであって、歴史的文書による史実とは趣を異にしている捉え方である。著者は言う。「遺跡や遺物を見るのに言葉はいらない。余分な形容詞もいらない。ただ静かに、黙って対面するに限る。心の中で縦横無尽に語りかけ、話の輪を自由に拡げ、思う存分語りあうことである」(「はじめに」より)と。つまりそれは、歴史の中に埋没しがちな遺跡・遺物を〈イメージ〉として捉え、これを自由自在に語ることの楽しさを味わうということであろう。また、遺品を通して人間に至るその道程をこそ、人生で味わうべき極上の旅として認識することこそが、〈文化〉を生み出す重要な要素なのだと著者は言いたいのだろう。

 

 本書は単なる旅行記ではない。それは歴史的世界に忽然と現れる痕跡としての遺跡・遺物・遺品を探索する〈文化〉と〈イメージ〉の歴史学なのであり、これこそが本来の意味での歴史なのだという、説得力のある記述によって明るみに出た歴史紀行なのである。

 

 それは歴史の“夢”であり、また“生命”であることは間違いなく、本書によってそのことがよく理解できる、まさに歴史好き必読の一書である。

 

 

文/菊地 道夫

 


Q & A


新川 寛(にいかわ ゆたか)/ 洋洋(ようよう)

昭和37年 小樽川柳社に入る

昭和38年 小樽川柳社同人、編集長となる

昭和46年 小樽川柳社退会、現代川柳「群」編集長となる

昭和50年 職業上の都合により川柳を辞める

平成07年 評論活動を再開、現在に至る

平成11年 『梨の花―評論と随筆―』を出版

平成14年 『梨の花Ⅱ―評論と随筆―』を出版

平成28年 『梨の花―評論と随筆―』電子書籍版を出版

 

 

○ プロフィールについて

 

―生年月日を教えてください。

 

新川:大正15年6月19日生まれです。

 

―幼少期はどんな少年でしたか。

 

新川:外遊びが嫌いで、読書や勉強を好む少年でした。

 

―ご家族との思い出の中で、印象深いものを教えてください。

 

新川:夏の濁流へ泳ぎ出し、無事、帰岸した父の背中を偉大なものと見たことです。

 

―学生時代の得意な科目、苦手な科目を教えてください。

 

新川:歴史、地理が得意で、苦手は体育かな……。

 

―学生時代は何を学ばれていましたか。また、現在の活動に生かされていますか。

 

新川:小学校、中学校、高校、大学と戦中・戦後を過ごしましたが、クラブ活動などの部活動はやらなかったです。食べることが精一杯の時代でしたから。

 

―どんなお仕事をされてきたのか教えてください。

 

新川:教員です。

 

―執筆活動以外にされている活動があれば教えてください。

 

新川:早朝における5kmのウォーキング活動とラジオ体操や、観世流謡曲、また現代川柳の作句などです。

 


 

○ 作品について

 

―「梨の花」というタイトルにはどんな想いが込められていますか。

 

新川:“清廉”です。

 

―1年間の執筆スケジュールを教えてください。

 

新川:毎年5月末募集、締め切りの「さっぽろ市民文芸」評論部門に応募することです。

 

―ご自身の作品のこだわりと、ポリシーを教えてください。

 

新川:古典を重視することです。

 

―次回作のご予定があれば教えてください。

 

新川:年齢も年齢なので、考えていません。

 


 

○ 20代、30代にフォーカスした人生論

 

―人生のターニングポイントを教えてください。

 

新川:どこにターニングポイントがあるかは分からないですが、それによって自分が生かされていることが分かれば、それがポイントとなります。

 

―若者がターニングポイントを見逃さないようにするためのアドヴァイスをお願いします。

 

新川:新聞、古典をよく読むことですね。

 

―人生の教訓を教えてください。

 

新川:教訓的なものはありません。

 

―若者に教えておきたいこと、大切なことを教えてください。

 

新川:意欲をもって取り組むことです。

 

―人生で最も影響を受けた人物や尊敬している人物を教えてください。

 

新川:尊敬している先輩は沢山いるけれども、現在に生かされているケースはありません。執筆活動に入るきっかけは、北見川柳社の辻晩穂氏と30年ぶりに再会したことです。

 

―人生で最も影響を受けた作品(本や映画)を教えてください。

 

新川:本、映画ともいろいろあります。

 


 

○ 最後に人生の先輩として大志を抱く方へ、メッセージをお願いします。

 

新川:先に何があるか分かりません。くじけないことです。私の場合は札幌市立病院に入院中で、書きなぐりとなりました。悪しからず。