無窮(むきゅう)の職人」 

 

自然に魅了された日本画家─ 

 

埼玉県在住・画家

菊地 秀夫(きくち ひでお)



自然の美を求めて:1,000円 税込み(電子書籍)
自然の美を求めて:1,000円 税込み(電子書籍)

「自然」がすぐそこにあった。画家は言う。「よく見て描かないと駄目だ」と。

 

 その痛烈な言葉通り作品創作を続けてきた生粋の作家、菊地秀夫の画業50周年記念日本画作品集が本書である。

 

 富士三部作である「朝光」「霊峰富士」「映」を筆頭に、埼玉県美術展覧会(通称、県展)で埼玉県知事賞を受賞した「樹間」や、埼玉県教育委員会賞受賞作「丘」、さらには埼玉伝統工芸会館に所蔵されている「落葉」、大作「白い華(スターマイン)」などなど、一心に創作活動を展開してきた画家の、ある意味では集大成とも言える画集である。

 

 菊地秀夫の創作の原点は、上記したように「自然」、この一言に尽きる。即ち、「自然」というものの存在が、画家を画家足らしめたのである。だから、もしも自然環境という豊穣な世界が存在しなかったならば……と考えると、私はぞっとするほどである。それだけ「自然」にこだわりを持って接してきた画家は、そういないであろう。しかし間違ってはいけないのは、これを科学的に分析して解明しようとしているのではなくて、あくまで普遍的生命観とでも言おうか、そういった有機的存在としての「自然nature」を洞察している。即ち、言ってみれば哲学的にその普遍性を追求しているとでも言うべきか。

 

 自然という対象は、決して数理的事象として存在しているのではなくて、あくまで有機的に存在しているという確固たる確信をもって接してきた画家の、生命とでも言うべき日本画作品群は、画家の“命”である。したがって決して概念化され得ない、画面からそこはかとなく垣間見られる雰囲気を、決して“奇をてら衒う”のではなくして表現していることに、私はどうもく瞠目するのだ。

 

 「生粋の画家」と前に私は書いた。しかしそれは、決してほころびることのなき絹織物としての日本美であるということに、もっと注目してもよさそうである。

 

 

文/菊地 道夫

 


Q & A


菊地 秀夫(きくち ひでお)

小川町に生まれる 。

日本画家 加藤 秋荘氏に油絵を師事 第19回県展初入選する。以後33回入選。

平成4年 日本画に転向し、日本画家 三尾 彰藍氏に師事する。

50回記念展知事賞受賞。

日本画家として、今もなお「感動することの大切さ」を追い求める俊豪である。 

 

 

○ プロフィールについて

 

―生年月日を教えてください。

 

菊地:昭和23年9月28日生まれです。

 

―幼少期はどんな少年でしたか。

 

菊地:ガキ大将でした。

 

―ご家族との思い出の中で、印象深いものを教えてください。

 

菊地:群馬県の谷川岳に家族全員で初めて行った時、思いもよらず素晴らしい紅葉に出会えた時には感動しました。また、一ノ倉沢を見た時、震えたのを憶えています。

 

―学生時代の得意な科目、不得意な科目を教えてください。

 

菊地:得意な科目は美術、数学、苦手な科目は英語です。

 

―学生時代は何を学ばれていましたか。また、現在の活動に生かされていますか。

 

菊地:高校時代の美術教師に学んだことは大きく、現在の創作にも生きています。

 

―日本画の制作以外にされている活動があれば教えてください。

 

菊地:日本画を描く前には洋画を描いていた時代がありました。また、個展を開催するなどの活動を行っています。  

 


 

○ 作品について

 

―本格的に絵を描き始めたのはいつですか。

 

菊地:高校時代から絵は描いておりましたが、本格的に始めたのは恩師である加藤秋荘先生に出会ってからです。

 

―日本画以外に、例えば洋画、書道、陶芸などのジャンルも得意だったりしますか。

 

菊地:洋画は本格的に描いていた時代がありました。絵画一本で通してきました。

 

―菊地先生にとって富士山はどんな対象ですか。

 

菊地:あまりに大きな存在なので、一言では言い表せない。そういう気持ちがあったので「富士山」を描くのに挑戦をいたしました。

 

―ご自身の作品へのこだわりと、ポリシーを教えてください。

 

菊地:主観で対象を描く。つまり見たままを描くのではなく、心で感じたもの(心の表現)を描くということです。

 

―納得いくまで何度も描きなおすと聞いております。ご自身の中で、もう筆を入れる必要がない、完璧に仕上がった最高傑作は何でしょうか。

 

菊地:最高傑作と言えるかどうかは分かりませんが、150号の画面に描いた「白い華(スターマイン)」は上手くいったほうだと思います。それから“富士三部作”(「朝光」「霊峰富士」「映」)ですね。

 


 

○ 20代、30代にフォーカスした人生論

 

 

ー人生のターニングポイントを教えてください。

 

菊地:二番目の師である三尾彰藍先生に出会ったことでしょうか。

 

―若者がターニングポイントを見逃さないようにするためのアドバイスをお願いします。

 

菊地:人との出会いを大切にすることですね。

 

―人生の教訓を教えてください。

 

菊地:挑戦する気持ちを忘れないこと。

 

―若者に教えておきたいこと、大切なことを教えてください。

 

菊地:自分の信じた道に対して、常に挑戦し続けることです。

 

―人生で最も影響を受けた人物や尊敬している人物を教えてください。

 

菊地:ゴッホやモネの影響を受けました。尊敬している方は、恩師の加藤秋荘先生と三尾彰藍先生です。

 

―人生で最も影響を受けた作品を教えてください。

 

菊地:クロード・モネの「印象・日の出」や一連の「睡蓮」の作品です。 

 


 

○ 最後に人生の先輩として大志を抱く方へ、メッセージをお願いします。

 

菊地:私の印象では「自然」をよく見ていない人が多いと思います。だからもっとよく「自然」を見て、そして研究しなければならないと思います。作品制作とはそこから始まるのですから。