「仏画の職人」
─「心」の森厳を求めて─
東京都在住・仏画家
廣瀬勲慧(ひろせくんえい)アナンダ
日本美術史を繙くと、古来より日本美術史において仏教文化によって花開いた仏教美術が栄華を極めた時代が長く続き、ともすると日本美術とは仏教美術と表現しても問題はないというほどの勢いである。
ことにアナンダ氏の仏画集『gold buddha artbook』を見ると、ある宗教的な荘厳性が、仏教という特定の宗教によって窮められたという感があり、それが仏画によって表現されているということに驚きを隠せないというのが、ことの真意である。
また、アナンダ氏の表現の多様性から推察できることに関して、アナンダ氏が本書『gold buddha artbook』において言わんとすることとは、その「心」の、一意ではあるが本意でもある哲学的思索の多様性にあり、ただ単に一所の哲学理論に帰するような視野の狭い概念ではなくして、これらの作品から私は、真の意味での他者性を感じるのである。
創作をするということは、自己精神を顧みる時間が必要であって、それなくしては絵画を創作することができないものである。しかしアナンダ氏の作品について言えば、「自己」という“殻”を脱した「他者」という超越的存在を、私は感じるのだ。
例えば曼荼羅におけるような緻密かつ細密な描写を施すということは、理論や概念、即ち「理性」を超越していなければ描けない境地であろう。また興福寺の阿修羅を描いた作品からは、理屈を超えたブッディズムを感じ、まさに驚愕する他はないのである。
『gold buddha artbook』における荘厳の光は金色に輝いて、私たちの「心」を、時にはやさしく、時には厳しく照らしているということに想い馳せることが、これからを「生きる」人々にとって大切なことであろう。
文/菊地 道夫
Q & A
廣瀨勲慧アナンダ(Hirose Kunei Ananda)
1942 年 東京生まれ
・チャルマティ仏画教室 主宰(現代アート仏画講師)
・タイ国立シラパコーン大学アートセンター客員教授
・禅宗僧、ネパール僧
<画歴>
ハンガリー「ポップ・フェレンス東洋美術館」(グリーン多羅菩薩収蔵)
沖縄 山原道山照龍寺(十三仏収蔵)
オーストリア・ザルツブルグ宮殿美術館(伎芸天)大賞受賞
WAC イタリア認定(ホワイト多羅菩薩)ピエール・ジャコモ・ペトリオ―リ奨励賞受賞
エイズチャリティ美術展(釈迦曼陀羅)エイズストップ功労賞受賞
<チャルマティ仏画教室>
教室名 チャルマティ仏画教室
主宰 廣瀨 勲慧アナンダ(ひろせ くんえいあなんだ)
電話番号 090 - 3695 - 3899
所在地 〒171-0014 東京都豊島区池袋3 - 30 - 8 みらい館 大明
※池袋駅より徒歩約10 分
レッスン時間
木曜日( 第2・第4) 13:30 ~ 15:30
日曜日( 第1・第3) 10:00 ~ 12:00
業務内容 仏画教室
私達の仏画教室は、一般に言われている写仏教室(原画をトレースして描くもの)とは違い、参考となる資料や発想イメージを元に構成し、デッサンから始まる現代アート仏画教室です。
不透明水性顔料(ポスカ)を画材とし、グラデーションは水筆一本を用いて完成へと進む全く新しい手法の授業です。 この不透明水性顔料(ポスカ)を画材とした教室は、世界で唯一私達チャルマティ仏画教室だけであろうと数社の美術関連業者から回答をいただいております。
また、近年大きな美術展に於いては受講生数名の受賞者を生み出し、このように国内外の美術界にあって今徐々にその注目度が増しております。
絵に自信のない方…大丈夫です。私達の教室では短期間で極彩色の美しい仏画が描けるよう充分な資料・カリキュラムが用意されています。
日本の仏画からネパール・チベットの仏画(タンカと言います)まで、阿・吽の呼吸でひとつ上を行く「私だけの心の仏さま」を楽しみながら、仲間と共に描いて行きましょう。
○ プロフィールについて
―生年月日を教えてください。
廣瀨:1942年(昭和17年)2月16日、東京生まれです。
―幼少期はどんな子供でしたか。
廣瀨:廊下や草むらに寝ころび、青空を見上げ、変化する白い雲を見るのが好きな、ぼんやりとした幼少期でした。
―ご家族との思い出の中で、印象深いものを教えてください。
廣瀨:私は6人兄弟の末っ子です。雨の日曜日は兄たちがみんな家にいて、にぎやかで、そんな雰囲気の中にいることが幸せでした。今でも雨の日はとても好きです。
―学生時代の得意な科目、苦手な科目を教えてください。
廣瀨:得意な科目は国語と生物、苦手な科目は英語です。というのも私を特別扱いし、必要以上に接近する女性教師に嫌悪感があったからです。
―これまでどんな活動をされてきたのか教えてください。
廣瀨:チャリティーコンサートの企画・運営や、ネパールの食と文化のレクチャー、ネパールには救急車を寄贈しました。また仏画教室の運営です。
―現在の活動について教えてください。
廣瀨:禅宗の僧侶活動と仏画教室の講師として国内外への出展等の制作活動です。
○ 作品について
―今回出版されました電子書籍の概要を教えてください。
廣瀨:「心」とは一体何処にあるのでしょうか。胸でしょうか。頭でしょうか。「心」は見ることも触ることも出来ませんが、誰もが「心」を持っています。人の心の中にあるやさしさ、思いやり、それらを仏の姿をとって描いてみました。
―なぜこのタイトルを付けたのでしょうか。
廣瀨:奈良、東大寺の毘盧遮邦仏(ビルシャナブツ)は自から私たちに法を説きません。体内から数限りなく小仏を出し、その小仏達が金色(コンジキ)の光となって法を説きます。タイトルのゴールドブッダはそこからきています。
―この本の作品からは、確乎たる強い意思を感じます。このような作品を創るきっかけを教えてください。
廣瀨:特に発心動機はありません。仏画を描き始めて数年の後、強い波動が全身をつつみました。そして聞こえたのです。「仏の慈悲を、仏の姿として描き現しなさい」と。
―これまで手掛けてきた作品へのこだわり、ポリシー(方針)を教えてください。
廣瀨:当初私は大衆に向けて描いていたような気がします。それらの作品は「未完の完成」であったような気がします。近年の作品に目を留めて、何かを感じていただける方がいらっしゃるなら、その方、個人へのメッセージとなり完成をみた事になります。
○ 20代、30代にフォーカスした人生論
―人生のターニングポイントを教えてください。
廣瀨:「足はこんなにも歩きたがっているのに、あなたはまだ歩こうとしない」思いついたら即、実行です。夢は夢、だめでもともとなどと浅はかな考えで踏み出してはなりません。元へ戻すのは大変な努力が必要です。あくまでもしっかりと足元を踏みしめて……。
―若者がターニングポイントを見逃さないようにするためのアドヴァイスをお願いします。
廣瀨:己に課す、意識的観察でありましょう。
―人生の教訓を教えてください。
廣瀨:「傍観者に失敗の苦しみはない。ましてや成功のよろこびもない」まさにこれに尽きます。
―若者に教えておきたいこと、大切なことを教えてください。
廣瀨:仏典の教えに「赤色赤光(シャクシキシャッコウ)・青色青光(ショウシキショウコウ)・黄色黄光(オウシキオウコウ)・白色白光(ビャクシキビャッコウ)」とあります。赤い色は赤く光りを発し、他の色も個々の光を発しているのです。自からが発するその色、その光をおろそかにしてはもったいないのです。あなたの今が輝いているのですから。
―人生で最も影響を受けた人物や尊敬している人物を教えてください。
廣瀨:影響を受けた人物は種田山頭火です。生命への自問自答、性への自問自答、探し、さがしつづけて歩いたのでしょうね。心中を隠すことのなく、多くの句を詠まれたように見えます。尊敬している人物は、自からの心に秘めるものと心得ております。ですから申し上げることが出来ません。
―人生で最も影響を受けた作品(本など)を教えてください。
廣瀨:『種田山頭火句集』です。自からの心の奥底を吐露する潔さ、句集に見られる人物像は、流石に禅宗の僧でありましょう。
○ 最後に人生の先輩として大志を抱く方へ、メッセージをお願いします。
廣瀨:夢は生涯持ち続けても重くありません。粛々と、淡々と……あっさりと、そして静かに。