漢詩・漢語読解の職人」 

 

ー「平仄」で読み解く唐詩の世界ー

 

鹿児島県在住・作家 / 鹿児島大学名誉教授

松尾 善弘(まつお よしひろ)



唐詩読解法:500円 税込み(電子書籍)
唐詩読解法:500円 税込み(電子書籍)

発音やリズムは言語の生命であって、これなしには言語は形成され得ない。

 

 もとより私はこの碩学の研究の半分も理解できていない。そんな理由から、ここにこうして解説を書くことさえためらわれるのだが、しかしこの研究が漢詩の、特に唐詩のリズムや音の追及であるということ、あるいはまた「平仄(ひょうそく)」という概念のつまびらかな論述であるということに関しては理解出来たので、その点についてのみの言及となることをご容赦願いたい。

 

 中国の漢詩における「平仄」とは、詩語発音上の重要なきまり事で、特に唐詩(近体詩)においては最も重要な規則として「平仄法」と呼ばれているらしい。即ち唐詩における語のリズムを規則的に並べることによって(つまり平声字と仄声字を交互に登場させて)リズムや音の調和(ハーモニー)を生みだすという、極めて重要な要素なのである。

 

 詩というものは確かに発音やリズムが命であって、例えばそれが歌謡として成立していなくても、言語の音(おん)からくる独特の“感じ”が心地よかったり馴染んだりするものである。それは漢語に限らず、全ての言語に当てはまる規範としての要素である。例えば俳句や短歌におけるような五・七音の形式的な羅列においてそのことは顕著となる。漢詩においても形式的な音の並列こそが大切となるから、このことは同様に当てはまる。

 

 だから音やリズムは言語の命であって、これなしには言語が形成され得ないといっても過言ではない。確かに英語においてはspeakingとreadingとが乖離しているが、ことに漢語においてはこれらが一体となっている観があり、そのことが特に面白い要素であると言える。

 

 本書は漢詩の「平仄」の研究書であるが、漢語の語音だけではなく、その語法・語義をも視野に入れたユニークな論考であると読むことが出来る。

 

文/菊地 道夫

 


Q & A


松尾 善弘(まつお よしひろ)

1940年 台湾・台北市にて出生。 

1946年 鹿児島県出水に引き揚げ、小 • 中・ 高時代を過ごす。 

1959年 東京教育大学文学部漢文学科入学。 

1963年 同大学院中国古典学科・修士課程入学。 

1967年 同上博士課程入学。 

1971年 日中学院講師・法政大学・駒沢大学・早稲田大学の中国語非常勤講師。 

1975年 鹿児島大学教育学部助教授。 

1981年 同教授。 

1997年 山口大学人文学部教授に転任。 

2003年 同定年退職。

 

 

○ プロフィールについて

 

―生年月日を教えてください。

 

松尾:昭和15年(1940年=紀元2600年)1月1日です。

 

―幼少期はどんな少年でしたか。

 

松尾:いわゆる“軍国少年”です。

 

―ご家族との思い出の中で、印象深いものを教えてください。

 

松尾:戦後の引き揚げで、食糧に苦労したことですね。

 

―小中学生時代の得意な科目、苦手な科目を教えてください。

 

松尾:全科目オール5、但し体育の“走り方”のみ4でした。

 

―大学生時代には主に何を学ばれていましたか。

 

松尾:中国語と中国古典学です。

 

―鹿児島県の良いところ、住みやすさ、魅力などを教えてください。

 

松尾:良くも悪くも“保守性”が強く、“ボッケモン”(直情径行型人間)が多いです。また、温泉が多く風光明媚、海の幸(魚類)などが豊富ですね。

 

―また、美味しいお店、絶景ポイント、地元客が集まる温泉、鹿児島に行くなら外せない行事などを教えてください。

 

松尾:至る処に湧き出る温泉や、砂蒸温泉、霧島・桜島、坊の津海岸などなど……。

 

―現在、執筆活動以外にはどんな活動をされていますか。

 

松尾:中国語講師や漢詩・漢文講師、それに日中友好運動をおこなっています。

 


 

○ 作品について

 

―中国語を学ぶにあたり、一番大事なことは何でしょうか?

 

松尾:声調を中心とした発音練習に徹することです。

 

―松尾先生がお勧めする、ご自身以外の漢詩の本はありますか。作者名でも結構です。

 

松尾:現在、日中漢詩人の漢詩本(解説書)は山ほどあるけれども、漢詩の生命である“平仄”に言及したものは一冊もありません。

 

―日本の漢字教育、漢文教育は間違っていますか?

 

松尾:漢字は“表意文字”であるという誤解から出発した表層的漢字教育であり、また、漢文を訓読のみで理解可能と考え、あいまいな形で進める漢文教育は歪んでいると言えます。

 

―昔からの“異端児”ということですが、表立ってではなくとも研究者の中で同じ意見の方はいましたか?

  

松尾:故倉石武四郎先生、故藤堂明保先生が二大恩師です。

 

―例えば、小説を書いてみたいお気持ちなどはありますか。

  

松尾:日本中の漢字力、漢詩読解力が払底している現在、何とかして易しく分かりやすい物語風の啓蒙作品を書いてみたいと思っています。

 


 

○ 20代、30代にフォーカスした人生論

 

―人生のターニングポイントを教えてください。

 

松尾:大学入学が人生における最高最大のターニングポイントです。

 

―若者がターニングポイントを見逃さないようにするためのアドヴァイスをお願いします。

 

松尾:常に進取の気性を失わないこと。

 

―若者に教えておきたいこと、大切なことを教えてください。

 

松尾:理想を広く高く揚げ、世のため人のため、自から考え自から行うことです。

 

―人生で最も影響を受けた人物や尊敬している人物を教えてください。

 

松尾:中国語学者の故・倉石武四郎先生、漢字語源研究者の故・藤堂明保先生です。

 

―人生で最も影響を受けた作品(本や映画など)を教えてください。

 

松尾:「オーケストラの少女」です。

 

―漢字が読めない、書けない世代が増えています。何から勉強するのが良いのでしょうか。

 

松尾:何事によらず基本に忠実に、易から難へ科学的に教え教わり、くり返し訓練すること。

 


 

オーケストラの少女

 

名指揮者レオポルド・ストコフスキーと実在のオーケストラであるフィラデルフィア管弦楽団が出演したことで知られる音楽映画である。1937年のアカデミー作曲賞を受賞している。

wikipedia より引用 


 

○ 最後に人生の先輩として大志を抱く方へ、メッセージをお願いします。

 

松尾:疑問を大切に、どこまでも真理を追究するということです。