かってに源氏物語 桐壺編:古語・現代語同時訳

上鑪 幸雄 / 著

発売日:2020/4/26

700円(税込)

発行形態:電子書籍



商品解説


 あれはいずれの御時だったか…… 私の記憶も定かではないのでございますが、確か今から千年も前の、桐壺帝がおわしましたころのお話だったと存じます。
 そのころの帝王様におかれましては重臣どもが献上つかわしました女御の御方々、公卿が差し出しました更衣なる女人があまたお仕えしておりまして、その中に大して際立つほど重要な女人でもない者の中に、優れて御心をときめかせるほど美しい女性がおったのでございます。
 その方は桐壺御殿にお住まいの方で、名前を小桐と名乗っておりました。この頃の桐壺帝の御寵愛はこの小桐様のみ注がれておったのでございます。
 初めから我こそ我こそはと、他の女人に負けてたまるかと思い上がりしあばたなる良家の御方々、帝王様の御寵愛を独り占めに致そうと、目障りな者あればねたみ陥れようと、責めぎあいに明け暮れておりました。
 同様なるほどにすざましきものありますれば、それより下郎となる身分の低い更衣なる小桐様は、心休まるときなど一時もありません。
 朝夕の宮仕えにつけても、人の心のみ気遣い、帝王妃様や、側室の女御様に無礼な振る舞いがありはせぬかと、殺気立った取りまきに目を動かし、恨みや反感を負うつもりはありけなんと、気配りを続けておったのでございます。
 余りにも重苦しさに疲れはて、頭がいと熱くなるほどに病に侵され心細げになりますれば、いよいよ実家に帰りたいと里がちになるのを帝王様は名残惜しいと哀れに思われまして、これでは冷たくあしらった帝としての体裁がが悪いと、世間の悪い噂も気になさり始めまして、この世で何回も繰り返されました例のごとく、優しい御もてなしで、里心を引き留めようとなさるのでございます。(本文より)

著書プロフィール


上鑪 幸雄(たたら・さちお)
昭和二十二年三月七日生まれ
昭和二十二年三月  現在の鹿児島県みなみさつま市金峰町高橋に生まれる
昭和四十一年三月  鹿児島県立薩南工業高校卒業
大阪市の電器会社(中小企業)に就職
昭和四十五年十二月〈二十三歳〉 滋賀県の大手電機会社に転職後、郷里の鹿児島県へ帰る
地元の縫製工場に三年勤務
昭和四十八年八月 〈二十六歳〉 神奈川県の自動車工場に就職
昭和五十一年十二月〈二十九歳〉  結婚
昭和五十三年十二月〈三十三歳〉 転職していた化学会社を退職後 折込広告業を始める、その間講談社と主婦の友社の文学教室に三年通う
平成二十五年三月 〈六十六歳〉 折込広告業を廃業
平成二十九年九月 〈七十歳〉

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