「母胎回帰」英訳版の発売です。

The mother's womb regression

(English Edition)

Kaoruko Mita(三田 薫子)/著

発売日:2017年6月13日

300円(税込)

装幀

カバー/22世紀アート

デザイン/22世紀アート


発行形態:電子書籍

ジャンル:文学



<日本語版からの引用>

 19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパでは世紀末文学が盛んに行われ、フランスにおけるようなデカダン主義の文学が勃興した。例えばシャルル・ボードレールの『悪の華』や、オスカー・ワイルドの『サロメ』などの退廃的な文芸運動が時代の趨勢を担っていた。

 

 それに打って変わって20世紀初頭から半ばにかけて行なわれた精神文化の復権は、精神分析学派の心理学者であるジグムンド・フロイト、カール・グスタフ・ユング、ジャック・ラカン、エーリッヒ・フロムなどによって担われ、時代は暗雲立ち込める世紀末から、明るい未来を見つめる夢のような世界となるはずであった。

 

 このような文学史の定説を踏まえた上で三田薫子氏の作品『母胎回帰』を読み込んでみると、三田氏は小説の可能性を「人間愛」「生命」「男と女」「幸福とは」というテーマで、男女の関係を桜町ルリ、都月頼近、都月凛子の間で繰り広げられる愛憎劇として、しかもそれは“屈折した愛”において展開される悲劇として表現しているということが分かる。小説の題名ともなった「母胎回帰」とは、人間、特に男性が心理的に保持している「体内回帰願望」であり、女性、もっと言えば“母”のもとへと戻りたいという願望である。この願望を女性に対する男性からの「愛」と捉えた本書『母胎回帰』には、いい意味でのデカダンな雰囲気が漂っていると考えることができる。

 

 理性で理解しようと躍起になっても「愛」という対象は理解不可能である。そうではなくて三田氏のように、これを小説で、しかも“愛憎劇”という形で表現したことによって、かえって読者は「愛とは」「幸福とは」「人間とは」と自身に問うこととなり、作者の意図は達成されたことになるだろう。いやいや、感服である。

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