オタージュリア 満天の祈り
(著) 上田哲美
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あー、故郷が遠のいてゆく。オターは涙ながらに見つめていた。迎えに来るまでは決して出てはいけない、そう言い残して姿を消した母。厳しくも優しい母の面影をまだ追い求めていた。
必ず自分を連れ戻しにきてくれる、そう思いつつも故郷ははるか遠く海の彼方になってしまった、かの地から自分を探すことは到底無理だと思えてしかたがなかった。
どんなに探しても海を渡っていったとなれば、かの地からは決して探せるはずがない。
どんどん祖国が遠のいてゆく、故郷の島影が遠くなってもう霞んで見えるほどになった。言われるままに日本の船に乗せられて自分を抱えていた男の傍らで、恐ろしさに震えながら船尾で見つめているしかなかった。(本文より)
【著者プロフィール】
上田 哲美(うえだ・てつみ)
昭和21年5月11日生まれ。
技術専門学校入学、芸術部を選択し三年間学び、英語の放送局で数年間働いた後、技術系の会社に転職。ODAで海外の仕事を任され数か国の放送局を担当する。
父親の危篤により仕事を国内に切り変え、同時に有限会社テコミュ・ユーを設立。
母の介護に伴い、仕事と介護の両立を試みるが、立ち行かなくなりやむなく会社を休眠。
自身も脳卒中を患い(幸いにも病は数カ月で完治)、母も病気が悪化して今年の二月に逝去。
現在に至る。
著作歴
2003年『徳之島物語―ある織女の愛と勇気』文芸社
2019年『交響詩徳之島(電子書籍)』22世紀アート
2020年『交響詩徳之島』22世紀アート
2020年『マリコの夢』22世紀アート
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