共同風呂から見る近代村落の共同体と生活文化――民俗学、人文地理学、歴史学を越えた視点から
(著) 白石太良
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――共同風呂で人々が情報交換をする様をたとえて、どの様な言われ方をしていたでしょうか。
1.風呂会議、2.風呂新聞、3.風呂学問
政治から噂話まで、様々な情報交換がされたようです。正解は、本書第1部「5 風呂の仲間 (3)仲間のつきあい」をご覧ください。
日本人は風呂好きであると言われるが、一部の経済的余力のある人たちを除けば、かつての一般庶民の家の多くには風呂場がなく、日常のなかで容易に「風呂に入る」ことができた訳ではなかった。近くに銭湯のある都会や町部とは異なる農村や漁村では、特にその傾向が顕著であった。そこで、農・漁村に暮らす庶民たちは、生活の知恵として、必ずしも豊かとはいえない人々が仲間をつくり、気兼ねなく湯浴みをするための設備とその組織として、「共同風呂」を生みだした。本書は、明治期後半から昭和初期ごろに出現し、昭和40年代以降はその役割を終え次第に姿を消したこの共同風呂について、各地域の調査・研究からその実態を明らかにし、さらには公衆浴場の事例や韓国・中国の浴場に関する報告なども含めながら、日常生活を通して近代における庶民文化と地域のあり様を考えようと試みた作品である。
[目次]
緒 言
Ⅰ 共同風呂の特徴
1 共同風呂の意味
2 共同風呂の分布
3 成立と衰退
4 湯沸しについて
5 風呂の仲間
6 地域のなかの共同風呂
Ⅱ 共同風呂の事例研究
1 鳥取県中部の共同風呂 ――地域調査をもとに――
2 佐賀県旧北茂安町の共同風呂 ――北九州の1つの事例――
3 愛媛県西部の共同風呂
4 北海道と沖縄県の共同風呂 ――屯田兵村と生活改善運動――
Ⅲ 共同風呂の調査報告
1 秋田県と青森県の事例
2 新潟県と石川県における聞き書き
3 愛媛県西予市宇和町の座談会抄録
4 北部九州の市町村史から
5 長崎県における調査
Ⅳ 韓国の共同風呂
1 セマウル運動に伴う共同風呂
2 済州島における共同水浴び浴場
Ⅴ いくつかの共同浴場事情
1 神戸と明石における公衆浴場の現状
2 三朝温泉と関金温泉の共同浴場
3 大阪府池田市の風呂と暮らし
4 韓国における沐浴湯の利用
5 東アジアの共同浴場 ――日・中・韓の比較――
6 鳥取県中・西部における公共温泉の顧客圏
あとがき
著者紹介
[出版社からのコメント]
現在ではあまり見かけなくなった銭湯について、懐かしい思い出をお持ちの方も多いのではないかと思いますが、こうしたコミュニティは、かつての日本の社会が持っていた色合いを生みだす要素の一つであったといえるかも知れません。本書を通じて、共同浴場やそれに代表される地域文化について、多くの方に目を向けていただければ嬉しく思います。
【著者紹介】
白石 太良(しらいし・たろう)
昭和12(1937)年4月13日生 大阪府出身
【略歴】
昭和40年3月、大阪市立大学大学院文学研究科(地理学専攻)修士課程修了。文学修士。
大阪府立高等学校教諭、鹿児島女子短期大学教授を経て、
昭和63年4月に流通科学大学開学に伴い同大学教授。図書館長、副学長を歴任。
平成18年3月、同大学を退職し、名誉教授となる。
【専門分野】
人文地理学(とくに集落地理学・社会地理学)
【現在の研究テーマ】
入浴の共同化と地域社会との関係
地域文化によるまちづくり
知られざる民俗文化と村落地域
【主な著書】
『人類集団の空間構造』(共著)晃洋書房 昭和61年
『改訂人文地理―風景・空間・知覚―』(共著)建帛社 平成10年
『村落における入浴の共同化の地域社会への影響に関する社会地理学的研究』(単著)科学研究費報告書 平成18年
『暮らしの風景―調査のなかでみたもの―』(単著)自費出版 平成20年
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