夏休みの「宿題」:ほか3編
(著) 神﨑博彦
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「主人公ののぶひろは作者自身でもあるが、時と場所を超えた典型でもある。あの頃緑は濃かったの郷愁と少年の永遠性が読者の心をうつ」(童話作家/岩崎京子)
夏休みも、あと、一週間ぐらいに迫った朝のことだった。
滝田先生が、
「夏休みの自由研究をこの紙に書け」
と言って、わら半紙を渡された。
毎年のことだが、この自由研究には、おれは頭を痛めていた。たけちゃんのように頭がよくてやる気のある者は、どんな研究でもできるし、やっちゃんのように器用な者は、昆虫採集でも植物観察でも、難なくやってのけるし、夏休みが終わってからの自由研究発表会は、いつもいい成績をとる。
だけどおれは、不細工だし、ねばりがないから、いつもいいかげんになってしまって、結局、中途はんぱになって、腹の内がもやもやしたまま夏休みが終わってしまう。
しかし、今年は、ちがうぞと思った。今年は、夏休み中、魚を取りまくるのだ。それも、おれたち四人で取るのだから、いろんな魚の研究ができるぞと思った。だから、おれは、ペラペラのわら半紙の中央に、堂々と大きな字で「魚の研究」と書いた。(本文より)
【著者プロフィール】
神﨑 博彦(かんざき・ひろひこ)
1942年(昭和17年)岡山県津山市に生まれる。
1965年(昭和40年)香川大学学芸学部卒業後、小学校教諭となる。
津山市内の校長や教育委員会参事・津山市教育長を歴任する。作文教育に取り組み、創作童話も手がける。
童話を中心とする「美作創作の会(こんぺいとう)」を結成・推進する。
また、童話を中心とする「かざぐるまの会」常任講師。
「津山の文学」童話部門入選、新庄村「メルヘンの童話」入選。
おれたちシリーズとして、今回の「夏休みの宿題」「おれたちの修学旅行」「それからのおれたち」を発刊、他に「野中の機関車」がある。
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