幕末・維新の西洋兵学と近代軍制 : 大村益次郎とその継承者
(著) 竹本知行
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[商品について]
―力が支配する国際政治の中で生き残るために、近代日本が選んだ道とは―
明治維新に始まる近代日本の歩みは、西欧諸国を範としつつ我が国なりの国民国家を建設していく過程であり、国民国家としての日本の独自性追求と欧米のそれへの平準化という二つの相反する方向性を持った困難な道のりであった。本書は、その中で軍隊が果たした大きな役割について、長州藩で活躍した有能な兵学者であり、明治政府では軍制改革を担当した大村益次郎に焦点を当て、幕末・維新期という時代の国際環境の中で自らをどのように位置付け、日本の歴史的固有性の中に異物としての西洋兵学を受容し近代軍制を確立していったのかを明らかにしようとする試みである。近代日本の国家の成り立ちを軍制という視点から理解し、また大村益次郎の軍事思想を知るうえでも、示唆に富む内容となっている。
[目次]
序 章
研 究 史
本書の目的
第一章 幕末期における洋式兵学の位相
第一節 海防と兵学
第二節 軍事科学としての洋学
第三節 長州藩の天保の改革
第四節 西洋兵学の跛行的進歩
第五節 西洋兵学の原典への接近
第二章 大村益次郎における西洋兵学の受容
第一節 宇和島における大村
第二節 江戸における大村
第三節 長州藩の安政の改革
第四節 大村の長州藩出仕
第五節 博習堂と大村
第六節 長州藩の攘夷決行と大村
第三章 大村益次郎における西洋兵学の実践――幕末
第一節 「正義派」クーデタと新体制の発足
第二節 長州藩の慶応の改革
第三節 第二次幕長戦争のテキスト
第四節 西洋兵学の実践――第二次幕長戦争における大村の作戦――
第四章 大村益次郎における西洋兵学の実践――明治
第一節 新政府部内における兵制をめぐる対立
第二節 対立の構図と展開
第三節 大村の建軍構想――「朝廷之兵制永敏愚按」――
第四節 大村における兵式の問題
第五節 明治維新史における大村の位置
第五章 大村益次郎の遺訓――大島貞薫と大坂兵学寮の創業――
第一節 大村の横死と兵部省の混乱
第二節 大坂兵学寮の操業――寮内の対立――
第三節 大坂兵学寮と「風聞書」
第四節 大坂兵学寮における大島――「風聞書」の起草者を追う――
第五節 大坂兵学寮の内実
第六章 遺訓の実現――陸軍の仏式統一と「徴兵規則」の制定――
第一節 陸軍における仏式統一
第二節 「徴兵規則」の制定
第七章 廃藩置県と徴兵制度の確立 ――「徴兵規則」と「徴兵令」の関係性――
第一節 内憂の高まり
第二節 四藩徴兵の瓦解
第三節 西郷出仕と三藩御親兵の設置
第四節 廃藩後の軍制整備
第五節 徴兵制度の確立
第八章 「徴兵令」と山田顕義
第一節 「徴兵令」と各種の反対論
第二節 山田「建白書」の内容
第三節 岩倉使節団における山田
第四節 「建白書」の行方
終 章
関連年表(一七八六—一八七年)
あとがき
著者略歴
[出版社からのコメント]
その国のかたちを知る一つの方法として軍隊に着目することは、過去の歴史はもちろん私たちが生きる現代においても有効な視点であると思います。憲法9条についてさかんに議論される今、私たちの国のかたちは如何にあるべきなのかを考えうえで、歴史に学ぶ一書として本書を多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。
【著者略歴】
竹本 知行(たけもと・ともゆき)
安田女子大学現代ビジネス学部公共経営学科 准教授
博士(政治学)
軍事史学会理事
一九七二年山口県生まれ
二〇〇五年同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士後期課程満期退学
同志社大学法学部助教などを経て二〇二〇年より現職
二〇〇七年「大村益次郎の建軍構想—「一新之名義」と仏式兵制との関連を中心に—」(『軍事史学』四二—-、二〇〇六年)で阿南・高橋学術研究奨励賞受賞(軍事史学会)
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