文学に出てくる死: 特に医療系の若い人、受験生のために
(著) 設楽哲也
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[商品について]
古今東西、物語は多く「死」を語る。
「死」はいつの時代でも最も身近で関心の深い問題であるが、「死」に対する考え方は必ずしも一様ではない。現代の日本でも、臓器移植法の成立過程で「死」の判定基準に多くの時間が費やされた。伝染病によって医療崩壊が起きれば、その先には患者の選別という限界事例が待ち受けている。
本書は、物語の中に現れる「死」を取り上げて、時代と共に揺れ動く人の死に対する観念をすくい上げようと試みる。
本書の中の死は物語的な死ではなく、安楽死やトリアージ、休業要請による自殺など、私たちが直面する現実が仮託した死であり、本書で示される「死」に対する観念の揺れは、今を生きる私たちの性別や年齢、国籍等による振れを考える上で有用である。
私たちが現実に直面する「死」を市民社会としてどう乗り越えていくのかを考える上で、多くの示唆を得られる一書となっている。
「目次]
序 文
第1章 子捨ての話
第2章 親か子か
第3章 人間は死の病を前にして如何に行動をするのか
第4章 来 世
第5章 芸術至上主義と死
第6章 怨霊、生霊、霊の離脱と復帰、変身など
第7章 神仏に祈る
第8章 娘の自殺(万葉集から)
第9章 殉死と主従関係
第10章 自殺幇助
第11章 心 中
第12章 天国の鍵 鎮魂 祈り 冥福 因果応報 審判
第13章 人造人間と人間
第14章 人間形成と死
第15章 終 章
[出版社からのコメント]
文学がさながら思考実験のように現実の世界を模倣するのであれば、それこそが文学の意義であり力であると言えます。文学において「死」が多く語られるのは、他人に譲ることも他人に奪われることもない「私」の死を、物語の死に仮託するしか術を知らないからかもしれません。生と死は表裏一体であり、それぞれの人の生と死は唯一無二のものである以上、それは等価とせざるを得ませんが、この等価性に歪みが生じるときに、生と死は最も苛烈な問題となって私たちの前に現れます。医療の進歩によって「死」が遠のいたとき、その差分の中にある生はどの様な形をしているのか、緊急避難や正当防衛の事例にも現れる人の生と生との衝突を私たちはどう克服していけばいいのか、本書を読めば次から次へと様々な思いが頭を巡ります。
コロナの問題に直面している今こそ、本書のテーマを多くの方と共有できることを願います。
【著者プロフィール】
設楽 哲也(したら・てつや)
昭和六年神奈川県平塚生まれ。
東京大学医学部卒。
東大助教授を経て北里大学教授(医学部耳鼻咽喉科学)
定年退職後北里大学名誉教授。
著書
『母のたんす』『続母のたんす』『音と匂いと味と』金原出版
『みみのはなし』月刊かがくのとも 福音館
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