歌集 家族の息吹: 群山叢書 第二六三篇

(著) 川田永子

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作品詳細

昭和三十二年「群山(むらやま)」に入会してより、早くも五十年余になりますが、振り返れば実にまたたく間にも思われる年月でした。

 この感覚はつまり、四十歳(昭和五十年)の時に、仙台に居を移して間もなくより、扇畑忠雄先生のご自宅にて「群山」の封筒宛名書きや発送の一端をお手伝いさせて頂いておりましたが、それらの楽しく有意義な年月も重なりましての事と、今更ながらに胸に迫る思いで深い感謝の念が湧いて参ります。

 その間に、どなたにも公平で思い遣り深い先生ご夫婦に、私も幾度か「もう歌集を出しなさい」とすすめられながら、生来の私の呑気さもあってついつい今日に至ってしまいました。しかし、来年はもう後期高齢者の仲間入り……。ふと焦る思いで、ようやく重い腰を上げたという次第です。

 私には、第一歌集となりますので、なるべく、先生の選を経た年月までを一区切りとして纏めたい思いで、そのほとんどを八人集『季節風』に発表後の昭和四十六年より平成十四年までの作品中から自選した五二九首を並べました。

 結婚後もやはり、私には家族が大きな支えでありましたので、自ずと歌材は、平凡な日常にかかわるものが多く、作品も拙いながら出来るだけ自分史的になるようにと、それに類する内容を集めて構成してみました。

「おかあさん」「おばあちゃん」と呼ばれる時の感動は、巻頭の一首に込めた感慨のように、本当に温かく深く心に沁みて、母性愛や家族愛を育んでくれるものであることを知りました。そして世に言われる「それが支えとなり疲れも忘れて」の文字通り、日々の多くの意欲へと発展する心理も知らされた思いです。もちろん、この心は、人々のあらゆる命の育みの喜びに通じるものであることは言うまでもありませんが、いずれにせよ、そんな和みを与えてくれた孫たちは勿論家族全員に、ありふれた言葉ながら感謝しております。更に、何事をも寛容に見守ってくれた主人、輝重に心から礼を言いたいと思います。

 以上のような流れを考えて、歌集名を『家族の息吹』としましたが、この広く深い意味を持つ「息吹(いぶき)」とは、私の好む言葉で、将来孫たちにも目を通してもらいたいとの念をも込めたつもりです。

<著者プロフィール>
川田 永子(かわだ えいこ)
昭和10年 宮城県にて生まれる
昭和31年 宮城学院国文科(現・日本文学科)卒業後、小学校にて勤務
昭和35年 結婚の後、退職
二人の子の育児を経て、花道や旅をささやかに楽しみつつ、現在に至る

短歌歴
「群山」昭和32年入会、現在編集同人を務める
「女人短歌」に数年在籍、廃刊となる
「サキクサ」特別同人
宮城県芸術協会会員
日本歌人クラブ会員

著書
八人集『季節風』
エッセー集『聞こえて欲しい・小さな雫』

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