知られざる明治の女性文化人・田中かく子――その生涯と遺された64通の手紙に見る「女丈夫」の生き方
(著) 浅見徳男
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―飯能の地に多くの文化的業績の種を蒔いた、明治の女丈夫の生きざま―
「三従の教え」を始めとする儒教の影響は、江戸時代より女性を縛り続け、明治の文明開化の時代になっても、庶民の間では女性の社会的地位は低いものであった。しかし、地方における富裕層の子女の中には、行作見習いとして都会地の上流家庭へ奉公に出され、そこから「女丈夫」といわれるような女性となる者もいた。本書は、江戸時代末期に埼玉で生まれ、明治のはじめに国学者井上頼囶が主催する私塾へ入門し、後に飯能ではじめて新聞を発行した田中一誠堂を創立した田中かく子の生涯と、荻野吟子や内藤萬寿子など彼女が交流した人々との書簡を解読し、若干の解説を加えてまとめた作品である。当時の女性の生き方、時代を知るうえで示唆に富む一書となっている。
[目次]
序
明治の女丈夫 田中かく子の生涯
●田中かく子の誕生
●荻野吟子との出会い
●甲府の女学院へ
●父の死
●新聞販売店開業
●瀬棚からの手紙
●『飯能時報』の発行
●相次ぐ別れ
64通の手紙と訳文及び解説
●凡例
田中かく子家の手紙解説
コラム 井上頼囶
1 田中かく子「拝啓 五月雨の以ふせき折可ら 益々……」
2 加藤若世「文して申上参らせ候 ま川〳〵先生様……」
3 井上頼囶「奉拝啓候 扨者當月二十二日神田大和……」
4 内藤ます子「来る春奈らて者難き鶯の初音より……」
コラム 権田直助
5 荻野吟子「其後者意外之御疎遠……」
コラム 奥原晴湖
6 荻野吟子「前文御免ん游ハし候……」
7 菊池可な「御書面のお毛むきいさゐ拝し奉候……」
8 菊池可な「萬里の皇風新年の嘉慶奉賀度……」
9 菊池可な「遠路の處御心ニ應させ……」
10 内藤ます子「新しき年能者し免の御祝ひこと……」
11 内藤ます子「年者替りつ連と 寒さ者……」
12 金子「此程盤殊の外御寒さ強く……」
13 井上頼囶「奉拝啓候 先日ハゆる〳〵御馳走尓……」
14 荻野吟子「一月丗日といふ日丹御出し給ハリし……」
コラム 内藤満寿子
15 荻野吟子「春ぎし頃者大勢参上……」
コラム 松本万年・荻江父娘
16 内藤ます子「身のやるせ奈き尓取まきれ……」
17 荻野吟子「いま多よ路しきをりもなく……」
18 内藤ます子「以可奈連者かくハ逢難きや……」
19 内藤ます子「御古満〳〵との御文難有者以し候……」
コラム 寺門静軒
20 内藤伝右衛門「其後者御無音ニ相過候……」
21 内藤ます子「日ニまし御寒さ津よく……」
22 内藤ます子「都も飛奈もをしなへて嬉しき……」
23 松本萬年「一書啓上仕候……」
24 内藤ます子「物ミな能あらたまるほとう連しき……」
25 内藤ます子「此程者御心尓掛ら連……」
26 井上頼囶「御手紙拝見 御揃皆々様……」
コラム 早川舟平
27 荻野吟子「御床しき折可ら御文有難久……」
28 内藤ます子「當年ハ常なき御暑さ……」
29 井上頼囶「貴簡難有拝見 い与〳〵御安健奉賀候……」
30 荻野吟子「前略 其後者意外之御無沙汰申上候……」
31 内藤ます子「毎度御古満〳〵との御文……」
32 荻野吟子「御文難有拝し上候……」
33 荻野吟子「兎角不順之候ニ候處……」
34 内藤ます子「古満〳〵との御文難有拝し候……」
35 井上頼囶「御手紙拝見 いよ〳〵御揃……」
36 井上頼囶「二十日附之御手紙拝見……」
37 隠 居「日ニ増御寒さ強く相成候得共……」
38 荻野吟子「本日鳥渡内藤氏江相伺ひ候處……」
39 荻野吟子「御文難有拝し上候……」
40 井上頼囶「御手紙拝見 御揃愈御安健奉恐寿候……」
コラム『飯能時報』★飯能銀行千住支店
41 小野かず「文してもふし参らせ候……」
42 井上頼囶「満須〳〵御健康奉恭賀候……」
43 内藤ます子「阿多ら敷年能始めの御古と本きとして……」
コラム『飯能時報』★飯能町の高齢者
44 荻野吟子「久々尓て愛姉の玉書耳接し……」
45 井上頼囶「拝後 御叮嚀之御状 却而痛入候……」
46 井上頼囶「拝啓 残暑甚候へ共益御健康奉恭賀候……」
47 荻野吟子「御文有か多く拝見申阿遣候……」
48 荻野吟子「去る廿三日出の玉章廿七日の夜るに……」
49 井上頼囶「御懇なる御文拝見仕候……」
50 井上頼囶「昨年十月より老生始四男八男九男病気……」
51 井上頼囶「御年始之御状難有拝見……」
52 荻野吟子「其後者存外御無音打過奉多謝候……」
53 荻野吟子「御潤者しの御文嬉しく拝し上候……」
54 荻野吟子「先日者御光来被下候處……」
55 荻野吟子「神の結ふ良縁をいのり上候……」
コラム『飯能時報』★凍氷の払底
56 荻野吟子「御文御嬉しく拝し上候……」
コラム『飯能時報』★隕石の話
57 荻野吟子「追々寒冷之候尓相成候處……」
58 荻野吟子「一筆申達し度筆をそめまゐら世候……」
59 荻野吟子「拝啓 御出京中者甚だ失礼申上……」
60 荻野吟子「時下寒気きひしく御座候處 皆々様……」
61 荻野吟子「拝啓過般者御多忙中御世話を煩ハし……」
62 井上頼囶「秋冷え節満寿〳〵御健勝大慶之至ニ……」
63 井上頼囶「拝復不相変御懇切耳 御優待被下……」
64 井上頼文「残暑厳敷候處益御勇健奉是賀候……」
年表
あとがき
著者略歴
[出版社からのコメント]
女性の社会参加については現代でも様々な問題と共に取り上げられますが、今よりも遥かに女性の社会参加が難しかった明治という時代にあって、挑戦をし続けた女性の生き方は時代を超えて、また性別を超えて、私たちにとって参考になるものを含んでいるのではないかと思います。ぜひ多くの方に本書を手にってご覧いただければ嬉しく思います。
【著者略歴】
浅見 徳男(Asami Norio)
飯能研究の第一人者。飯能市史編纂に参加。
飯能市郷土館初代館長。
著述多数。近著には、『飯能の幕末』『西川林業史』、『飯能の住民が燃えた時―武蔵野鉄道と観光開発―』等。
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