社会力の時代へ:互恵的協働社会の再現に向けて【電子書籍版】
(著) 門脇厚司
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[商品について]
「誰だって自分がかわいい」
「人は人、自分は自分」
「他人のことになんて、かまっていられない」
こうした言葉や考え方を耳にしたり、自ら使用した経験はないだろうか。一見、人間の生存本能に根差すと思われがちなこうした考え方は、実は人間の本来の姿ではない――。
本書では、「人とつながり、社会をつくる力」としての「社会力」を提唱する著者が、「成長の限界」の危機に立ち向かうために必要な「互恵的協働社会」をどの様に実現するかを、一般の人にも分かりやすく丁寧に解説する。
近代社会が私たち何を植え付け何を奪ったのか、閉塞し膠着した現代社会の問題に鋭く切り込む、すべての社会人必読の書。
「目次]
開講に当たって ―― なぜ、いま、「社会力の時代」なのか
重大な局面に遭遇している人類社会
想起すべきローマ・クラブの警告
第一講 社会力とはどのような資質能力か
社会力とは、人が人とつながり社会をつくる力
社会力豊かな人間のイメージ
社会力ある人間を育てることの重要性
ほか
第二講 社会脳はどのように作られ、その仕組みはどうなっているか。
社会力は極めて高度な能力である
ヒトの特性と脳の仕組みと働き
ヒトの脳が大きくなった理由と進化の過程
ほか
第三講 社会脳の発達不全はなぜ進んだのか
進んだ他者の喪失と現実の喪失
加速する社会力の衰弱
忘れ去られた「他人(ひと)」の存在
ほか
第四講 経済的文化的格差と能力格差の実態はどうなっているか
1970年代に台頭した文化的再生産論
家庭で用いる言葉の違いで生じる能力格差
人間形成の内実を規定する文化資本
ほか
第五講 教育機会の平等と最良の教育は能力格差を解消するか
ほぼ達成されている教育機会の平等
最良の教育の条件とは
最良最善の教育は能力差を拡げる
ほか
第六講 社会力育てが、なぜ、諸々の難問を解決する決め手なのか
競争を奨励した産業社会と拡がる格差
「互恵的なつながり」こそ能力格差を解消する
恵まれた能力を他者のために活かす倫理
ほか
第七講 目指すべき互恵的協働社会とはどのような社会か
利己的競争社会としての産業社会
産業社会の推進装置としての教育制度
子どもの能力判別装置としての学校
ほか
第八講 互恵的協働社会が実現する可能性はあるか
トマセロの利他的人間論
わが国にも多い利他的人間論
人間の利他性を覆した近代産業社会
ほか
第九講 これからの教育は何を目指すべきか
学力向上に躍起な教育現場の実際
目指すべき新しい社会ビジョンを欠いた現行の教育
「社会を生き抜く力」ではなく、「社会をつくる力」を
ほか
第十講 社会力育てが、なぜ、人類社会を救うのか
終末期に入った近代産業社会
〝地救〟原理のすすめ
人類社会を救う日本人の感性
ほか
ゼミの最後に
あとがき
著者略歴
[出版社からのコメント]
東日本大震災の中で、マスメディアではさかんに「つながる」というフレーズが流されましたが、このことは却っていかに現代の私たちが分断されているかということを浮き彫りにしたようにも感じます。私たちの社会を運動会に例えるなら、今の私たちの社会は二人三脚ではなく、どちらかと言えば徒競走やリレーに近いかもしれません。
著者は「社会力」を説明するなかで、私たちが当たり前のように「正しい」と思っていることに異なる角度から光をあて、その実像を明らかにしていきます。
本書は難解な理論書ではなく、問題を共有し共に考えるというスタンスで話が進められます。ここで丁寧に語られる人間本来の姿は、決して珍しいものではなく、私たちは間近に見ることができます。
今の社会をいかに生きるべきか、本書を通じて多くの方にお考えいただけることを願っております。
[著者プロフィール]
門脇 厚司(かどわき・あつし)
1940年9月30日 生まれ
1970年3月 東京教育大学大学院教育研究科博士課程修了
1970年4月 淑徳大学講師
1974年7月 東京教育大学講師・助教授
1978年4月 筑波大学助教授・教授
2004年4月 筑波学院大学学長
2010年10月 茨城県美浦村教育長
2016年12月 茨城県つくば市教育長
2019年12月 つくば市教育長退任
2020年1月〜 現在、著述業
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