老いぼれカエルと根室原野は知っている――ひとりの開拓民からみた根室開拓の歴史と戦後の足あと
(著) 芳賀信一
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――根室原野に造られた植民軌道の動力源は、次のどれだったでしょうか。
1.牛、2.馬、3.人
正解は、本書「7、交通の移り変わり」の「植民軌道」をご覧ください。
昭和2年の北海道第二期拓殖計画によって、本格的に始まった根室内陸の開拓。本書は、その開拓移住農家の5男坊として生まれ、激しく移り変わる時の流れの中で、気付けば82年もの間、開拓の原野で生きてきた著者が、これまで支えてくれた根室原野の大地が歩んできたその足跡を、記憶を辿りながら綴った記録である。敗戦後の原野から戦後の土づくり運動、高度経済成長の中での新酪農村建設事業まで、時代と共に変遷してきた原野と人々の情景がいまよみがえる。
[目次]
はじめに
【戦前参考編】
1、冷害が導いた有畜農業
●夢の穀倉地を襲う白い悪魔(昭和2~20年)
●畑作農業は大きく方向転換へ(昭和8年)
●根室酪農の出発点
2、戦争で有畜農業は停滞(昭和16年~20年)
●農村の働き手は戦地へ
●求められる食用作物と特用作物、軍馬候補
●女、子供が銃後を守る
●増えるソバの作付
【戦後編】
3、敗戦時の根室原野
●子供の目に映った敗戦の原野
●裸足の生徒
●ホダテの貝殻も食器に
●男は丸坊主、女はモンペに割烹着姿
●揚げヒバリ
●感動するセミの脱皮
●カエルの大合唱
●アヤメやエゾカンゾウが消える
4、原野を襲うコガネムシ
●なぜ消えたコガネムシ
5、原野の大木が消えてゆく
●消えるヤマのこだま
●防風保安林の木も払下げ
●懸命に続けられた植林
●農家の耕地防風林は草地に変わる=昭和40年代
●原野の森林と戦後復興に思う
6、軍馬補充部跡地に眠る広大な原生林
●戦後の復興に切り出された森林
●原木の払下げ
●ヤマの飯場
●飯場の食事
●ヤマの炭焼きさん
●時代を映し出す防風保安林
●ひねくれ老木
7、交通の移り変わり
●植民軌道
●鉄道(標津線) 完成=昭和10年、 廃線=平成元年
●どろん道は舗装の道に
8、エゾシカ根室原野に現れる 昭和40年代
●エゾシカ根室原野に現れる
●農家泣かせのシカたち
9、戦後の食糧と農業
●食糧不足の日本
10、日本初の人工授精事業
●原野のリーダー(三羽ガラス)
●日本の人工授精事業のスタート
11、無牛農家の解消と生活改善運動
●子返しの貸付牛
●どん底からの這い上がり
12、培われた原野の地力
●土づくり運動
●火山礫で堆肥盤づくり
●開墾時に大量の土壌改良資材投入
●糞尿の使い方にも変化
●デントコーンの再登場
13、あの時あのころ
●木炭自動車
●冷戦時代の出来事
●澱粉工場の最盛期
●澱粉ブームが去って
14、国策のプロジェクトを省みる
●北海道第二期拓殖計画(昭和2~21年)
●根釧パイロットファーム(入植予定=第二地区昭和31~33年、第一地区同34~36年)
●新酪農村建設事業(新酪)
●根室原野と国策プロジェクト
おわりに
≪戦争の傷跡≫
≪失敗や誤りが貴重な礎となる≫
[出版社からのコメント]
人が大地に根付くのは決して生易しいことではないということを、開拓の歴史は私たちに伝えてくれますが、同時に人が大地で生きるために何が必要だったのかも、そこには残されていると思います。自然の厳しさを忘れてしまった私たちが、自然と共生するために、開拓の歴史を振り返ることは意義のあることではないでしょうか。
【著者略歴】
芳賀 信一(はが・しんいち)
昭和10年(1935)別海町上春別にて出生
昭和33年 根釧パイロットファームへ開拓者として入植
昭和43年 農林大臣、同55年農林水産大臣賞受賞
昭和55年 第19回農林水産祭畜産部門で天皇杯受賞
昭和58~61年 中春別農業協同組合組合長理事
著書
平成18年、謎の殖民軌道(自費出版)
平成22年、パイロットファームの光と影(北海道新聞社出版)
平成24年、回想記その1 みちくさ(俺の少年時代)(自費出版)
平成25年、回想記その2 おどる若者(俺の青少年時代)(自費出版)
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