真の意味での現実が映し出される渾身の震災ドキュメンタリー。
東日本大震災――未曾有の被害をもたらし、まさに世界に激震を走らせた3.11。奇しくもヒロシマ、ナガサキに次ぐ形で、フクシマという言葉を世界中に広めたあの記憶からは、自然というものに対する様々な想いが錯綜することによって、あたかも自然災害としての自然のみに集約された負の記憶しか残っていない人も多くいるはずである。それはある意味で、自然という存在の意味が問われたのだと考えることができる。
また、日本という国の存在も、大震災という形で世界中の人々に記憶されることとなった。そして世界が地震や津波というものの恐ろしさを知り、不安感に苛まれたのである。
今もって東日本大震災の爪痕は各地に残っており、避難者の苦悩や怒りは消えない。したがって震災復興という行動が重要性を帯びてくる。これは私たち人間の使命であり、あの恐怖の出来事を記憶の底に埋没させてはならないという想いがそうさせているのだ。
本書において登場する様々な立場の人たち――まさに人間の描写から生み出される数々の人間模様が、深く、鋭く、これを読むものの心に訴えてくる。特に石原という登場人物の「大自然は人間に厳しい試練を与えるが、同時に人と人との絆の大切さと大きな幸せも与えてくれる」という想いが、大震災ドキュメントという形で表現されていて、胸を打つ。復興にかかる時間、自然と人間との関係、“日本”という国の精神、人間の“命の尊厳”といった奥深いテーマが原田氏の的確な文章によって、生々しく迫ってくる。
そうだ、私たちは震災の現実、恐ろしさをほとんど何も知らないのだ。あの凄まじき光景を本書によって知る意義は、まさに今、ここで生きている人間の必要不可欠なテーマかもしれないと、そう感じた。
著書プロフィール
原田 邦雄(はらだ くにお)
1942 年 広島県府中市上下町に生まれる
1965 年 私立修道高等学校卒業
1965 年 広島大学工学部土木工学科卒業
1965 年 不動建設株式会社入社
1994 年 取締役就任
1999 年 常務取締役就任
2005 年 同社退社
2005 年 NPO 法人観光立県支援フォーラム設立、専務理事就任
千葉大学及び千葉商工会議所と連携して、
・千葉観光文化検定試験実施
・千葉観光人材育成講座・サービス産業人材育成講座等を開設・実施、
・千葉ブランド銘菓「千葉集・葉重」を開発し、
老舗菓子店米屋等4社で販売
など、千葉県の観光産業発展に貢献
2011 年 同法人退社
2013 年 株式会社 日本マナー総合研究所設立 代表取締役就任
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