居場所

最近、思うことがある。
人と人がただ集まって目的もなく喋るだけの
無駄とも思える「居場所」が、いかに尊いものなのか。
日本中に溢れるそれらは
クリエイティブの根源といってもいいと思う。

同じ趣味や夢をもつ同志、芸人の卵や役者の卵、
スキルアップをめざすセミナーの仲間が集まる
「お決まりの店」、と聞くとイメージできる人も
多いのではないだろうか。

思い返せば、僕も渋谷の駅前にあった
「32016(通称ウメバー)」という
音楽仲間のたむろする店に入り浸っては、
夜を使い果たしていた。
そこではすべてが大袈裟で、
大したことのない出来事すら大事件に思えたりしては、
翌朝我に返るような日々だった。
そういう「居場所」から生まれたエネルギーが
一つずつ大きくなって、いつしか有名になった人もいた。
僕は僕で、その居場所からもらった最高のエネルギーを
握りしめて創業した。
それからは居場所が会社に変わり、今ではこの場所で
毎日命を使い果たしている。

居場所とは、僕のものでありながら、
どこかの誰かのものでもあるのに
居心地がいい場所のことだ。

コロナ以降は、そういう場が
少なくなっているように感じる。
だからこそ、僕は僕が体験したような、
無駄で非効率だけど尊い居場所を、作家さんが
気軽に集える居場所をここに残すことに決めた。

近々、発表するプロジェクトもそのひとつだ。
作家にとって大いなる居場所となりうる場を
作るために、これからも精進する。

株式会社 22世紀アート
代表取締役 向田 翔一