鬼道(おにがみのみち)の経典

古事記を読む: 仏教以前の倭の世界 

配山 實(著)

発売日:2016年5月26日

 大自然界に棲息している生き物は、喰うか喰われるか、凄まじい生存競争を延々に繰り返している。生き物は他者の命を横取りして己が命を永らえさせている。人類も例外では無い。肉や魚は無論のこと、米や野菜も生き物である。それら生き物達の命を横取りして人の命は永らえている。

 狩猟採集時代(原始的アニミズム時代)の人びとは今しがたまでピョンピョン跳ねまわっていた獣や空高く飛んでいた鳥、たわわに稔った木の実や土深く根を張っていた菜類を口にしていたために、他者の命(八百万神)を己の命に「接(つ)ぎ木」していることを実感できていた。

 現代人にとっては食べ物は単なる「物」に過ぎないのだが、物自体に命の存在を認めていた時代の人びとにとっては命ある物は「神」であり、自分たちが神を食べていることに気付いていた。そして他者の命を以て己自身が生き永らえていることに気付くと、八百万の神々に感謝する気持ちと敬虔な信仰心が萌え出る。「いただきます」と手を合わせて箸を取る日本的食事マナーの原点には、食べ物(八百万神)自体への感謝の気持ちが込められていた。

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