人間への“愛”」が感じられる歌集論。

青き玻璃

棟 幸子/著

発売日:2017年4月26日

500円(税込)

装幀

カバー/伴 由香利

デザイン/22世紀アート


発行形態:電子書籍

ジャンル:文学



 本書は歌論集である。しかし巷間によくありがちな論理的で格式ばった、形式的な歌論集ではない。その文章には短歌や人間への“愛”が感じられる。即ち「言葉」というものへの率直なる“愛”が感じられる。きっとこれらの感情を的確に述べると「人間愛」というものが導かれるのかもしれない。

 ところがよく言われるように、「言葉」という存在は完全ではない。そこにはいつも、流動的で有機的なる偶有性が伴う。ある意味ではこの「偶有性」こそが短歌や詩の命かもしれない。しかしここで言う「偶有性」というものが、偶然、適当という意味でのそれではないことは言わずもがなではあるが。

 以上のようなことがはっきりと分かるのが、棟氏の中国、沖縄、イタリアにわたって行われた旅にある。これらの広範囲にわたる旅の記憶から生まれた歌も数多くあったであろう。確かに旅には日記を付けたりするような「記録」という意味合いもあるが、それよりも重要なことは、旅の「記憶」にあるだろうと思う。その精神的作用こそが歌を生じさせているのだろうから。棟氏にとって旅とは、「言葉」の、あるいは歌の意味を考えるための重要な要素であったはずである。

 また人間への熱い眼差しも本書からは感じ取れる。特に「太田青丘二首」という随筆にある「私は、青丘先生の心の襞を見る思いがする。人間の情緒的な感情の奥に秘められた勁い意志と理性を感じる」という文章に、いかに太田青丘という人物を敬愛していたのかがうかがわれる。短歌は確かに「言葉」で成立している。しかし根本的に「言葉」とは人間を表している。そこに短歌の真実が映し出されるということなのであろう。

 こうなるとやはり冒頭に述べた「人間愛」というキーワードががぜん真実味を帯びてくる。歌とはかように不思議なものである。

著書プロフィール


 

棟 幸子(とう さちこ)

 

1926年 樺太豊原市に生まれる 

1942年 北海道小樽市に移る 

1970年 春より作歌はじめる 

1971年 潮音入社 太田青丘先生、絢子先生に師事 

1975年 新墾入社 足立敏彦先生、椎名義光先生、飯田哲雄先生の選を受く 

1984年 第一歌集「あをき翼」上梓 

1992年 第二歌集「青き海」上梓 

1998年 第一歌論集「青き玻璃」上梓 

2001年 第三歌集「もし雪が青く降るなら」上梓 

2007年 第四歌集「青き窓」上梓 

2016年 電子書籍版 : 第三歌集「もし雪が青く降るなら」上梓

2016年 電子書籍版 : 第四歌集「青き窓」上梓 

 

 

日本歌人クラブ会員

北海道歌人会会員

 


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