故郷に原型を見る、戦後の昭和を舞台にした心に残る「11」の短編集。
表題作を含む生まれ故郷に原型を見る、戦後の昭和を舞台にした心に残る「11」の短編集。
その故郷の原風景の中に人物を登場させ、著者の代弁者として語らせる郷愁の物語。
ー本文よりー
じゃりんぼ——とは、砂利を相手にしながら生きているという意味で、その語韻は野卑でさげすんだ響があり、清太郎を人間でない人間にしていた。
著書プロフィール
田村貞男(たむら さだお)
総合燃料商社に25年間勤務、販売店の開拓と指導育成業務を担当、取締役を最後に退職し「営業と企画の相談室」を開設。民生用エネルギーと住宅設備関係の分野で活躍。現在、LPガス元売り、ガス機器メーカー、卸商、小売店等の顧問コンサルタントとして全国各地で講演、経営相談、営業指導、イベント企画等に活躍中。
専門誌「月刊LPガス」に15年間継続執筆。「会津ガス物語」等朝日新聞ローカル紙に「ふるさとの歴史」執筆。商社〜販売店の情報誌、数誌に毎月掲載。群馬県甘楽町のふるさと大使。
主な著書
①詩集『はる を まつびょうにん』(雄文閣)
②『八輪車の旅』(雄文閣)
③『仕事着で考えるプロパン店経営』(産業報道出版社)
④『やっとこ屋商店繁盛記』(産業報道出版社)
⑤『セールスマンの川中島合戦記』(産業報道出版社)
⑥『繁売店と半売店のお話』(産業報道出版社)
⑦『風と光と影と』長編歴史小説(上毛新聞社 平成1.上毛出版文化賞受賞)
⑧『かわたれの槌音』長編歴史小説(あさお社)
⑨『糸の舞い』(鳥影社)
⑩『人生日和り』岡部栄信物語(上毛新聞社)
⑪『風乱』小幡藩明和事件考(上毛新聞社)
⑫詩集『はんにゃのめん』(鳥影社)
⑬『別れ霜』(鳥影社)
⑭『箕輪城残月記』(上毛新聞社)
読書投稿より
これは「よいとまけの唄」と近いテイストのお話ですね。テイストっていう言葉は軽い感覚で受け取られやすいけれど、そうじゃない。ヨイトマケの唄が深いならばテイストも深い。肌感覚でこれは人として記憶しておくべき話だと思った。人と人の繋がりがSNSで拡散すればするほど、本当の個人は希薄になるような、そんな気がする。土付き野菜が土を塗りたくって価値を上げている現代にグサッとダメ出しをして欲しい。そんな話だ。
この作品は小説だったり、エッセイみたいな表現だったりと顔色をコロコロ変えるところが面白い。でも雑味はない。それぞれがそれぞれ、独立していて完成度が高い。なかなかまた面白い作家を発見した。他に何冊かを出版しているようなので、他を読んでみたいと思います。
11篇共に小説でありながらも、そのうちの何篇かは随想を読んでいる様な錯覚に陥る。
それはきっと作者の原風景を描いたとがあったので、年代が違うけれども、登場人物たちに共感、共鳴出来る面が多々あるからだなと改めて思いました。
書籍へのコメントはこちらからどうぞ
堅 (月曜日, 19 3月 2018 15:26)
ぼくは今の時代に生まれてよかった。恋愛は正直言って苦手だが、今の時代の恋愛はしばりが少なく、恋愛しやすい環境にあると言える。だからもっと今の時代で色んな経験をしようと思った。
むぎ (月曜日, 19 3月 2018 15:14)
知能障害のある清太郎と、今の私は同じでした。
戦時中に数日の兵役を経験し翻弄され戦後、自分の生きていく唯一の仕事を無くし、未来に失望していたところ、1度遊びに行った遊女を求めて街へ出掛け、ひとりの遊女と知り合う。そして迷いながら自殺へと足を運んで行く。
私は自殺を考えているわけではないが、「唯一の仕事」にこだわり未来の道を閉ざしてしまう清太郎のそれです。
最後に二人は、警察官に「未来を悲観ばかりせず、選ばなければ仕事はある」と次へ進むように促される。
生きていれば道は開けると訴えている。
間違いなく、本の中の二人とここにいる私には心に響いた本でした。
三郎 (木曜日, 07 12月 2017 09:10)
真珠湾の所在地を三重県と答える子供達、戦争よりも自殺で死ぬ子の多さ、死の商人になって兵器を売り歩く大統領、武器・兵器を売って戦争をさせて鎮圧に乗り出す大国、戦争を「聖」の字で飾るいかがわしさ、戦争を知らない子供達もついに高齢者になった日本……このような時代に、戦時中に知能の遅れから戦力外とみなされた男(きっと戦場に行けば優しくてすぐ死ぬタイプだろう)の物語――ずしりと胸に響く。