「森の音」は、私の生涯をとおして微かにひびく基調音のようなもの。

森の音

神谷 佳子/著

発売日:2017年4月2日

500円(税込)

装幀

カバー/22世紀アート

デザイン/22世紀アート


発行形態:電子書籍

ジャンル:文学



「森の音」とは何と響きの良い言葉であろうか。これは明らかに作家のドイツでの日々を投影しているタイトルであろう。というのもドイツという国の鬱蒼としていて暗い森の情景は、何がしかの創造性を駆り立てる効果があるからである。

文豪である谷崎潤一郎の名随筆に『陰翳礼讃』があるが、これは日本の伝統文化の中にある種の“暗さ”を発見し、それを美として認識したものであるが、それというのも「森の音」という言葉の音の響きに美しさを感じたであろう神谷氏の美的感覚を体験できる一書として、歌集『森の音』は密やかに存在している。いや、静かに読者を待っているような観があるのだ。

 作者はこう書く。「「森の音」は、私の生涯をとおして微かにひびく基調音のようなものである」――ここでの「基調音」とは作者のこころの奥底から響くべくして響いてきた叫びであると思う。しかしその「叫び」は決して他者を理解させたり、困惑させたりするような俗なものではなくて、ある種の“美”、それも自然の美なるものの通底に存在する重低音であったろう。だからこその、神谷氏のこころの深み、またいい意味での渋みが歌集に流れているのだろうと思われる。

 言葉無くしては、確かに人間は存在し得ない。しかし自然の音は、そうではない。ならば短歌としての言葉の響きに、この自然を、文化を乗せて生き抜こうとする作家の心意気を感じさせる歌集である。

著書プロフィール


神谷 佳子(かみたに よしこ) 

昭和5年9月13日生まれ、波乱の昭和と言われますが、生まれてから昭和20年、太平洋戦争が終わるまで戦争が続きました。

 

 まず、昭和6年に満州事変が起こり、次いで昭和12年に日支事変、昭和16年12月8日、太平洋戦争が起こります。昭和20年8月に、広島と長崎に原子爆弾が落とされ、敗戦の日8月15日を迎え、私が生まれてから15年続いた戦争が終わりました。そのあいだ私は父の仕事の関係で、台湾に二度、住みました。人も産物も豊かで、とても住みよいところでしたが、二度目の渡台は昭和16年12月8日の太平洋戦争が始まった翌年でしたので、戦時下となり次第に空襲も激しく、住んでいた場所が台湾南端の高雄州屏東というところで、高雄には日本海軍の軍港があり、私の住んでいた屏東市には飛行場がありました。フィリピン作戦には屏東から特攻隊機が毎日飛び立ちました。

 

 その頃は、女学校(中学一年)と言いましたが、アメリカとの戦争でしたから英語は敵国語ということで教科から外されました。戦争が激しくなると、空襲のため、落ち着いて学校でも勉強が出来なくなり、軍の要請で飛行場の整備や食糧増産の畑仕事で、毎日が厳しいものでした。

 


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