『棟  幸子』先生の短歌が、

 

産経新聞に掲載されました。

 

 2018.01.11 


電子書籍

もし雪が青く降るなら

棟 幸子/著

発売日:2016年4月24日

500円(税込)

一九九二年四月から二〇〇一年六月までの作品の中から自選しました六百首ほどです。この自選するという作業の大変さをまたあらためて経験し、閉口いたしました。前歌集の「青き海」より十年近く経っているのですが、その間のうたの成長よりも、テーマ意識がはたらいて抒情することができませんでした。何と荒っぽい歌集かと思わざるを得ません。

 こうして一冊に編むのは、ただ自分の為というより言い様がありません。この大変なことを、これ以上加齢しては出来なくなるという思いがありました。他に何もせず、ただ歌だけにかかわってきた、そんな自分を見つめたい思いであります。



電子書籍

歌集:青き窓

棟 幸子/著

発売日:2016年10月27日

500円(税込)

この世界を点すささやかな灯り ― 短歌とはそのようなものではないかと思うのです。

 一九九五年、ツアー旅行で夫とアメリカを訪れました。その際、添乗員氏の計らいでニューヨークの国連本部を見ることができました。私達を出迎えてくれたのは、大空に列を成す国連加盟国の旗という旗。翩翻と風に吹かれている様は壮観で、その美しさは今でも忘れることができません。反射的に私の目は日の丸を探していました。 

 また、ケネディ元大統領とジャクリーン夫人を祀っているアーリントン墓地にも参りました。銃弾に倒れた若き大統領のため夫人が点した灯が、国民の手で「永遠の炎」となって絶えることなく燃えつづけているのです。



電子書籍

棟 幸子/著

発売日:2017年4月26日

500円(税込)

 本書は歌論集である。しかし巷間によくありがちな論理的で格式ばった、形式的な歌論集ではない。その文章には短歌や人間への“愛”が感じられる。即ち「言葉」というものへの率直なる“愛”が感じられる。きっとこれらの感情を的確に述べると「人間愛」というものが導かれるのかもしれない。

 ところがよく言われるように、「言葉」という存在は完全ではない。そこにはいつも、流動的で有機的なる偶有性が伴う。ある意味ではこの「偶有性」こそが短歌や詩の命かもしれない。しかしここで言う「偶有性」というものが、偶然、適当という意味でのそれではないことは言わずもがなではあるが。

 以上のようなことがはっきりと分かるのが、棟氏の中国、沖縄、イタリアにわたって行われた旅にある。これらの広範囲にわたる旅の記憶から生まれた歌も数多くあったであろう。確かに旅には日記を付けたりするような「記録」という意味合いもあるが、それよりも重要なことは、旅の「記憶」にあるだろうと思う。その精神的作用こそが歌を生じさせているのだろうから。棟氏にとって旅とは、「言葉」の、あるいは歌の意味を考えるための重要な要素であったはずである。

 また人間への熱い眼差しも本書からは感じ取れる。特に「太田青丘二首」という随筆にある「私は、青丘先生の心の襞を見る思いがする。人間の情緒的な感情の奥に秘められた勁い意志と理性を感じる」という文章に、いかに太田青丘という人物を敬愛していたのかがうかがわれる。短歌は確かに「言葉」で成立している。しかし根本的に「言葉」とは人間を表している。そこに短歌の真実が映し出されるということなのであろう。

 こうなるとやはり冒頭に述べた「人間愛」というキーワードががぜん真実味を帯びてくる。歌とはかように不思議なものである。