だれか夕陽にふさわしい口笛をふけ

(著) 中垣克朗

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作品詳細

早熟の天才詩人・中垣克朗。幻の詩集が今、よみがえる。

「青春を生きたという標(しるし)に、若者らしい炎を燃やしつづけてペンを執らなければならないと想った。心身を琢磨し、人生のひとこまを保存しなければならないという義務があるように想えた」(あとがきより)
戦争の傷、恋と性――鋭く、みずみずしい感性でつむがれた言葉。18歳~24歳の心の軌跡をおさめた一冊。

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夕陽が沈むまでに出発してくれ。破壊の烽火(のろし)があがらぬうちに、責任転嫁の大量虐殺や過失致死を招かぬうちに、腫物手術が、臨床実験にならないように、昼夜が永遠に引き裂かれないように、不安の生贄(いけにえ)にならないように、みんな広場に集まってくれ。スイスの牧童の角笛にまじって、ノルウェーの漁夫の貝笛に交互して、素足のインドシナ・アンナン娘の麦笛に合わせて、情熱の口笛が聴こえたら、みんないっせいに心の北極星をみつめてくれ。地球の座標と各自の位置を注目してくれ。瞬きする間に、地球が流れ星になるかも知れない。
(「素朴な祈り」より)

【著者プロフィール】
中垣 克朗(なかがき・かつろう)
1940年・三重県南牟婁郡御浜町阿田和に生れる
1957年・少年詩集「踏切」(自家版)跋・清水太郎
1959年・三重県立木本高校卒
1960年・詩集「季節はずれの愛」(昭森社)
    あとがき・吉田精一
1963年・中央大学法学部卒
1978年・童謡集「どすんとぽい」(総和社)

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