推理小説 夢幻

(著) 上杉辰

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作品詳細

この世に生命を授かった人間が、生涯何の困難にも悩みにも出くわすことなく順風満帆の中、穏やかな人生を送り終わる事など、誰にもあり得ないことだろう。だからこそ、そこに生きるための忍耐、努力、工夫が生まれるのかもしれない。
 私も突然予期せぬ事件に遭遇する事になった。それが人生というものであろうか。いま私は床の中に入り、ひとり一年前の出来事を振り返っている。
 小春日和の清々しい朝、お得意さん回りをしてくると言って元気な笑顔で事務所を出掛けた主人と、どうした訳か一日中携帯電話が繋がらない。こんなことは今まで一度もなかったことである。
 私達は共同経営している税理士事務所を二人のチームワークで運営しているので、用事が有ろうが無かろうが一日七、八回は必ず連絡を取り合っている。それが今日に限り彼から何の音沙汰もない。何があったのだろう。主人の明日の予定もあるのでこのままにしておけない。(本文より)

【著者プロフィール】
上杉 辰(うえすぎ・しん)
(本名 穐山和壽)
静岡県沼津市出身

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