植物生態学:基礎と応用

(著) 林一六

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[商品について]
―奥深く広い植物生態学の世界へようこそ―
「本書は、著者が自然から直接学んだ結果についての結論と考察を述べている。この本を上梓することによって、現在、生態学が課題としている問題点が明らかになり、今後どの方面をさらに研究するべきかの指針を与えてくれることを期待するものである」(はじめに)
植物生態学の基礎(群落の分類、分布、動態予測、遷移)について詳しく解説し、それに基づく具体的な研究例(ミズナラ群落の生態、ブナの種生態など)をまとめた論文集。またケニアでの植生回復実験や、中国内蒙古草原の退行防止など、世界での応用例も紹介する。
植物生態学分野の研究者必読の書。

[目次]
は じ め に
第1章 植物生態学の基礎論
1-1 植物の基本的属性と植物群落
1-2 植物群落の定義
1-3 植物群落の実例
1-4 種の生態学的側面
1-5 生活型生態学
1-6 生活型の拡張概念:生活様式
1-7 生態系生態学
1-8 進化生態学
1-9 生態学におけるスケールの問題
第2章 世界の植物群落分類
2-1 群落分類の方法
2-2 群落分類の規則
2-3 世界の群落分類
2-4 考察
第3章 植物群落の分布論
3-1 ブナ群落とミズナラ群落の分布
3.1.1 開葉の観察
3.1.2 低温暴露実験
3.1.3 ブナ北限地域付近の気候環境
3-2 シラカンバとダケカンバの垂直分布
3.2.1  植生調査
3.2.2 種子発芽と芽生えの成長実験
3.2.3 開葉
3.2.4  生育型の可塑性
3.2.5 シラカンバとダケカンバの生態的特性の比較
3.2.6 生態的特性と環境条件からみた分布の説明
第4章 植物群落の動態予測
4-1 基本的な用語の説明
4.1.1 植物群落
4-2 植物群落遷移
4-3 植物群落遷移の実例
4-4 日本の中性的立地での二次遷移
4-5 世界の二次遷移の比較
4-6 二次遷移各ステージ優占種の生活様式
4-7 優占種の生態的特性とその組合せとしての生活様式
4-8 遷移のメカニズム
4-9 非典型二次遷移
第5章 遷移が進むとその場はどう変わるか。
5-1 一年生草本群落:シロザ群落
5-2 二年生草本群落:ヒメジョオン群落
5-3種子多年型生群落:ヨモギ群落
5-4 種子少産型多年生群落:ススキ群落
5-5 植物群落の遷移と土壌の発達
第6章 アカマツ群落からミズナラ群落への遷移過程の解析: 相互作用する系としての植物群落
6-1 アカマツ林の調査
6.1.1 調査地と方法
6.1.2 結 果
第7章 ミズナラ林の生態
7-1 ミズナラ林の種類組成と植物季節
7.1.1. 調査地と調査方法
7.1.2. 種類組成の調査と温度、光の測定
7.1.3 結果
7-2 ミズナラ林の植物季節
7-3 ミズナラ林の温度、光条件
7-4 ミズナラ林の成長
第8章 ブナの種生態
8-1 ブナ個体の成長解析
8-2 ブナ個体の生育型の量的側面
8-3 炭素、窒素の各器官での分布と季節変化
8-4 ブナ個体群の成長
第9章 実験植物群落学:ススキ草原の事例
9-1 ススキ群落の地上部除去実験
9-2 ススキ群落の優占種除去実験
第10章 植物の種子・果実の生産と分散
応用編 第11章 ブラジル北東部の植物生態
11-1 カーチガ植生
11-1-1 カーチンガ群落の樹木の生育型特性
11-1-2 樹木個体の直径の成長
11-2 ブラジル北東部での土地利用と植生の退行
11-3 樹木の根元の直径と胸高直径
第12章 世界の薪炭問題:ホンジュラスにおける事例研究
12-1 ホンジュラス国の概況
12-1-1自然的背景
12-1-2社会的背景
12-2 薪炭の供給源としての森林の分布と特性
12-3 Pinus oocarpa マツの生育型の量的側面
12-4 薪炭需給の問題について
12-5 薪炭問題からみた提言
第13章 ケニアにおける植生回復実験
13-1 実験地の概要と方法
13-2  調査結果
13-2-1 樹木の成長
13-2-2 地域の薪炭の消費量
13-3 植生回復の方法
13-3-1 植林樹種の選定
13-3-2 土地利用システム
13-3-3 熱帯半乾燥地域における植生回復
第14章 中国内蒙古シリンゴルの植物生態
14-1 植物群落の調査法
第15章 ユーラシアステップ地帯の植物生態
15-1 ユーラシア草原の概観
15-2 この章で述べる内容のための準備
15-2-1 草原の植物群落の種類組成と種類間の順位関係
15-2-2草原地帯の植物体現存量測定と測定法の吟味
15-2-3 構成種のv-値の測定
15-2-4 立地の状態診断
15-3 ウクライナ、ハリコフ付近の植物生態
15-3-1 調査地域と方法
15-3-2 結果と考察
15-4 カザフスタン,パブロダールにおける植物生態
15-4-1 調査地域と方法
15-4-2 結 果と考察
15-5 モンゴルステップの植物生態
15-5-1 調査地域と方法
15-5-2 結果と考察
15-6 中国内蒙古フルンべイル草原の植物生態
15-6-1 調査地域と方法
15-6-2 結果と考察
15-7 全体の考察
15-8 引用および参考文献
著者略歴

[担当からのコメント]
植物は私たちに最も身近な生き物の一つと言えますが、その割には彼らがどのような世界を生きているのかということはあまり知られていません。その意味で本書は、専門家向けの内容も多いですが、植物の生態について知ることができる一書ではないかと思います。自然や植物に興味のある方は、ぜひご一読ください。

[著者プロフィール]
林 一六(はやし・いちろく)
昭和14年(1939年)、長野県に生まれる。
東京教育大学理学研究科修士課程卒、理学博士。
現在 筑波大学名誉教授
専門 植物生態学

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