障害者雇用のパイオニア・渡辺トク伝 : 洗濯屋女社長・94年の道のり

(著) 桐生清次

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作品詳細

[商品について]
―働いて生きる幸せ。それは障害の有無を超えた、人の喜びに他ならない―
障害者への社会の理解が不十分だった1960年代に障害者雇用を始め、人間を創る福祉企業の母といわれている渡辺トクさん。日本における精神障害者雇用のパイオニアとして、彼女はどの様な人生を生き、如何にして障害者の自立と雇用に注ぐ情熱を生み出したのかーー施設や病院に送られ、帰る家もない知的障害者や精神障害者を一個の人間として受け入れ、共に働き、共に生きていたその歩みがいま語られる。現代に求められる福祉のあり方を問いかける、渾身のノンフィクション。

[目次]
はじめに
第一章 どんなに辛くても
1 生いたち
生 家
幼いとき
家の人に反発して
渡辺家の嫁になる
2 新しい生活を求めて
朝鮮へ渡る
長淵の日本人学校へ
百年鉱山小学校
朴政東
3 嫁として
日本に戻る
政東が日本に
急性肺炎にかかる
嫁として
新潟の父母との別れ
疎 開
第二章 福祉への道
1 教育活動のスタート
家の中
突然PTAの司会者に
山岸千枝先生との出会い
障害児との出会い
いろいろな活動
すべての子どもを幸せに
山下清展
「手をつなぐ親の会」
玉井潤次先生を会長に
政東の独立
2 会社創設
基準寝具の仕事に出会う
主人の死
主人の後を継ぐ
資金調達
新潟地震
3 企業か福祉か
知的障害をもった実習生
従業員に迎える
商社の揺さぶり
工場の全焼と引っ越し
子どもたちとともに
精神障害者との出会い
精神障害者を迎える
井口の再発
次々と受け入れる
経営の行き詰まり
企業か福祉か
第三章 一歩一歩
1 家がほしい
幸創会をつくる
自分たちの家を
一億円融資の夢
モデル工場の申請と認可
2 前 進
ケースワーカーの参加
「ほがらか作業所」をつくる
第一寮「おらが家」を買う
訓練費の誤解
「仁福祉作業所」をつくる
外からの求人
3 壁を乗り越え
第二寮づくりの計画
メンバーの脱退
計画再開
仕事を切られる
第四章 いのちかつぎて
1 幸せを求めて
正夫とさち子の結婚
茂と美津子の結婚
清とアキ子の結婚
2 いのちかつぎて
戻ってこなかったタミ子
この子を家に帰さないでください
ヤヨイのリハビリ
納税者になった田村
太郎の自立
娑婆の飯を食わせてください
泣かなくなった川本
過ちを犯した吉野
3 老いと死をみつめて
共同墓地
ハルヨの死
アキ子の死
みどりの死
共に働き共に生きる   ――あとがきに代えて
著者紹介

[担当からのコメント]
本書を読んでいると、人はひとりでは生きられないという当たり前の事実を私たちがいかに忘れているかを思い知らされます。「共生」は21世紀の重要なキーワードの一つですが、頭で考えるそんな言葉よりも渡辺さんの生き方は遥かに多くの気づきを与えてくれます。渡辺さんが生涯をかけて培ったその実りを、ぜひ多くの方に受けとっていただければ嬉しく思います。

[著者紹介]
桐生清次(きりゅう・せいじ)

1933(昭和8)年新潟県生まれ。日本大学卒業後,東京大学で教育心理学を学ぶ。
1970(昭和45)年から中学校で特殊学級を担任し,新潟大学講師,新潟県立女子短期大学非常勤講師などをつとめる。
福祉活動にも力を入れ,保護者と共に手をつなぐ育成会を作り,知的障害者施設やトロイカ方式(行政,企業,福祉施設,三者提携)によるクラレ作業所などの建設に携わる。その間,心身障害福祉賞(NHK厚生文化事業団),上村忠雄賞(新潟県手をつなぐ育成会)等受賞。
現在,社会福祉法人七穂会理事,知的障害者授産施設・虹の家園長。
著書に『次の世は虫になっても』柏樹社(NHKドラマ選奨受賞,文化庁芸術祭参加),『最後の瞽女――小林ハルの人生』『百年の庵主さま』文芸社など多数。

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