
ふるさとは近きにありて惟(おも)うもの――杉田泰一文学論考・エッセイ集
(著) 杉田泰一
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――ソファーに右肘をついた有名な夏目漱石の肖像写真は、いつ撮影されたものでしょうか。
1.明治天皇の大喪の礼の時、2.大正天皇即位の礼の時、3.日露戦争開戦の時
正解は、本書「二 平成十四年 ―― 平成二十年」の「6 中継ぎのゼミで「芸術」を問う」をご覧ください。
ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの
そう歌った詩人・室生犀星にとって、これはたんなる望郷の詩ではなかった。そこには、不義の子であった詩人が、故郷の現実に絶望し、復讐心さえ持ちながらも、故郷を完全に切り捨てることができない魂の苦悩がひびき渡っている――。サルトル、キルケゴール、ヤスパース、ハイデッガーなど知の巨人たちが提起した問題に目を向けながら、詩人にとって故郷とは何であったのか、われわれにとって故郷とは何なのかを鋭く考察した「人間、この病めるもの」、萩原朔太郎の一篇の詩を題材に、詩人の中での故郷の位置づけの探究を通じて、我われにとっての故郷の意味を問う「故郷とは ――萩原朔太郎――」など、本書は放送大学の客員教授時代を含め、著者がこれまで発表した論稿や小文、講演・セミナー等の内容を加筆・修正して、まとめたものである。都会化によって便利さだけが優先され、ふるさと的なものの喪失を招いている現代において、私たちが切り捨てながらも心の底のどこかで渇望する「何ものか」を炙り出す一書として、示唆に富む内容となっている。
[目次]
序にかえて ――あどけない話――
一 昭和六十二年 ―― 平成二年
1 後久川今昔の感
2 他者理解 ――苦いおもいで
3 「父は永遠に悲壮である」
4 「これでよい」
5 会者定離
6 「晩期大成」
7 凧
8 西穂高・独標登山 一九八八・八
9 自立について
10 雨の石庭
11 西穂高・独標登山 一九八九・八
12 旅立ち
13 兎の飼育係
14 実存の思想と道徳 附属浜松中学校退任講演
15 人間らしさと個性の伸長 附属浜松小学校教官との懇談会
二 平成十四年 ―― 平成二十年
1 東海道本線と富士山
2 浜松サテライトスペース
3 浩然の気を養う
4 「これが人生だったのか、よし、それならもう一度!」
5 放送大生に期待したい
6 中継ぎのゼミで「芸術」を問う
7 菊池寛『忠直卿行状記』を読む
三 人間、この病めるもの
1 主題への前奏 ―― 病める詩人の素描
2 病とその根
3 故郷とその喪失
4 むすび ―― 「野の道」
四 故郷とは ――萩原朔太郎――
A 帰郷とは、そもそもいかなることなのか
B 故郷とは、そもそもいかなるところなのか。
五 この地に人はいかに住まうか
1 地域の今日的状況
2 生活場としての地域
3 故郷としての地域
4 教育の場としての地域
5 地域の今後
六 イデオロギーについて
1 はじめに――イデオロギーの興亡
2 イデオロギーという概念
3 イデオロギーの力学
4 イデオロギー的仮象への批判
七 わたしの履歴
八 ハイデッガーの足あと
あとがき
[出版社からのコメント]
文芸作品は、一度生まれれば作者の手を離れてゆくものですが、同時に人間としての作者を内包しながら生き続けるものでもあるように思います。作品の中で作者という人間に出会い、作者を知ることで得られるより深い文学的鑑賞体験の楽しさを、ぜひ本書を通じて味わっていただければ嬉しく思います。
【著者略歴】
杉田 泰一(すぎた・たいいち)
1937年静岡県生まれ。
東北大学大学院文学研究科博士課程中退。静岡大学助教授(教育学部)を経て教授。
1987〜90年 附属浜松中学校長
2001年 定年により退職。静岡大学名誉教授
2002〜08年 放送大学静岡学習センター長
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