Kさんとの対話から〝こころのゆれ〟が語るもの ――どんなあなたも、輝くあなた――

(著) 赤羽潔

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作品詳細

[商品について]
―若者たちは今、未来の見える「対話」を求め続けている―
私の中にある大きな劣等感は、それを克服したとき何処にゆくのだろうか。二面性のある私とそれを使い分ける私、いまの私はどれだろうか。自分を語る自分の言葉に自分で抵抗して、その言葉はますます荒れ狂ってゆく。なぜだろう。どうすれば良いのか。ひとりの青年から渡された手紙に書かれていた人間不信と劣等感の表白。そこにあるのは感情に任せた言葉ではなく、その言葉の奥にある自らの内面へと目を向ける眼差しだったーー臨床教育学者として多くの若者と向き合ってきた著者が、青年が綴った手紙を通じて若者が抱える「劣等感」を解き明かしていく、31日にわたる精神の対話。

[目次]
まえがき
Ⅰ 一枚のメモが開かれた
1 「劣等感」の素顔 (読書:第1日)
2 〝Kさん発〟の一歩を
Ⅱ 「劣等感がある」と「劣等感をもつ」の違い
1 「ある」と「もつ」の違い (読書:第2日)
2 もう一人のKさんの登場
3 『強迫圏』から『自己実現圏』へ
4 「劣等感」とつきあう (読書:第3日)
Ⅲ 「二面性」を問う
1 パーソナリティーの構造 (読書:第4日)
2 抑圧との闘い
3 「おくび」の奥にあるもの
4 隠蔽の『理知』と『屈辱感』
5 『知性的自己』への転身 (読書:第5日)
6 感情の揺れの合間を生きる
7 内と外のコーディネーターの登場
8 『知的甘え』を支えに『知的創造』へ
Ⅳ 「自己中心的」な世界について考える
1 若者たちの世界で (読書:第6日)
2 精神的蹂躙(じゆうりん)の構造
3 ただ一つの焦点
4 『自虐性』を解くステップ
5 内なる『大学』を創る
6 発達論からの展望 (読書:第7日)
7 「嘘つき」を問う
8 肯定面にスポットを
9 「否定面」への囚われからの脱却
10 提言――小さな肯定的事実の上に立つ
Ⅴ 基本的概念を見直す
1 『虚偽』と『虚構』の狭間で (読書:第8日)
2 現実の諸局面を気楽につなぐ
3 「嘘」にこめられた『真実』
4 命題「失敗もまた成功である」 (読書:第9日)
5 『強食論』『結果論』から『統質論』へ
6 失敗の重要性を見る
7 『批判』と『非難』の区別を (読書:第10日)
8 「感情的痛み」ではなく「知的痛み」を
Ⅵ 『優柔不断』の確かさをさぐる
1 『優柔不断』とは何か (読書:第11日)
2 『人間の尊厳』につなげて
3 能力主義を超えて――生きた対話の再構築を
4 『便宜』を活かす――与えられた結論を超えて
5 『便宜的結論』は未来(あす)への仮説
Ⅶ 『感情』への囚われ
1 『感情』は誰のものか? (読書:第12日)
2 気楽な一歩の踏み出しを
3 〝一つの結論〟への執着
4 背後の『正直さ』と『確かさ』 (読書:第13日)
5 「ハッキリ言えない」ことの確かさ
6 何よりも『主体』の尊重を
7 『感情』から『知』への飛躍を (読書:第14日)
8 『自己の発見』『自己との出会い』
9 小さな一歩の大きさを
Ⅷ 「矛盾」を突破する道を探る
1 「信じることが恐い」と言うとき (読書:第15日)
2 信じるに値するものと出会う
3 信仰における「信じる」こと
4 『一般論』の陥穽(かんせい)(落とし穴) (読書:第16日)
5 具体への問いを重ねる
6 「裏切られ」感触の背後にあるもの (読書:第17日)
7 『平和』を求めて「信」の命題を問いつづける
8 「信じる」主体の姿
9 『同調』からの離脱へ (読書:第18日)
10 『青年期』と向かい合う
Ⅸ 『孤立』を超えて『独立』の世界へ
1 『孤立』と『孤独』の狭間で (読書:第19日)
2 『孤立感』の深まりのなかで
3 二面の狭間を生きる
4 『生の絶対値的転換』そして『鈍化』 (読書:第20日)
5 「人の評価」を受けて『自分の評価』を
6 必然を喚(よ)ぶ土台を創る
7 自己を発達論的に見る
8 「他者(ひと)の独立性」を見る
Ⅹ 「言葉」を語る世界を探る
1 『屈辱感』の背後の三段階(その一) (読書:第21日)
2 『屈辱感』の背後の三段階(その二、三)
3 『屈辱感』から『展開感』へ (読書:第22日)
4 『自立』概念の登場
5 「事実」とは何か (読書:第23日)
6 「事実」を語り、離れ、再生する
7 『真実』とつなげる
8 「事実」の語りが生み出す転機
9 「吐き出す言葉」を支えるもの
10 『屈辱感』再論――感情の世界と対話するわざを
11 対決の構図の崩れ (読書:第24日)
Ⅺ 「劣等感」が消えたとき
1 「知的ちから」への転換――『自己決定権』の保障 (読書:第25日)
2 受けとめるちからへ
3 信頼し尊敬できる自己との出会い
4 脱却の方法論の開拓を (読書:第26日)
5 「些細なこと」を支えに
6 『仮面』を活かして生きる
7 こだわりのポイント
8 「否定」を「肯定」に転化する
9 『自己破壊』から『自己創造』へ
10 「精神的戦乱状態」から翔び立つ
Ⅻ 未来(あす)への呼びかけ
1 小さな肯定を大事に (読書:第27日)
2 『努力』の焦点
3 『生』の深層の多文脈へ
4 暴力体制からの脱却の過程
5 「夢」と「希望」は生きつづける (読書:第28日)
6 『劣等』による『発達』を見る
7 『生』の深さの真理性
8 実質ある『優位』を求めて生きる (読書:第29日)
9 リーダーシップが生きるとき
10 多くの自他との出会いのなかで
11 未来(あす)への呼びかけの一歩 (読書:第30日)
12 リーダー像の転換
13 進化した『鈍化』へ (読書:第31日)
14 『理想主義』と『現実主義』の統一へ
15 『誇り』と『尊敬』を向ける自己へ
16 一歩の『事実』を
17 『二〇歳(はたち)の精神(こころ)』、その後
おわりに
著者略歴

[担当からのコメント]
自分に自信がない、傷つくのがこわい、自分以外の誰も信じられないといった心の問題は、多かれ少なかれ誰もが抱え経験しているのではないかと思います。よくいわれる「思春期特有の悩み」としてではなく、それらを多くの若者の心に潜む現代の病理として捉え、正面から対峙したのが本書です。若者に限らずこの病理に悩む全ての方にとって、本書は自己と向き合うひとつのきっかけになるのではないかと思います。ぜひご一読ください。

[著者略歴]
赤羽 潔(あかばね・きよし)

1949年 長野県高遠町に生まれる
1984年 東京大学大学院博士課程終了
現 在 山口県立大学名誉教授
著 書 『学級集団の理論と実践』(1991年 福村出版)
    『子どもとひらく生活指導の実践』(1992年 福教社)
    『教科外活動を創る』(1994年 労働旬報社)
    『「脳死願望」の果てに』(1998年 青木書店) 他
    『二十歳の精神に』(2002年 川島書店)

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