船員にこだわる物言い

(著) 雨宮洋司

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作品詳細

[商品について]
―海という国際舞台で、日本人の真のリーダーシップを育むために―
外航商船船員であると内航船員を問わず、今日の日本人船員たちは、二度目の敗戦ともいうべき困難な現実に直面している。本来、人間的に厳しい職業であっても国際舞台で活躍できるという夢のあった船員という職業は、グローバルな低コスト競争で乗り切ろうとする今日までの経済政策過程と、長期的な視野を持たない1980年代から90年代における日本の政・官・労・使・学による船員社会改革の方向性によって、大きく痛めつけられてきた。本書は、海運経済学と港湾論の研究者であり自身も船員生活の経験を持つ著者が、陸上の他の職業とは異なる船員という職業の特殊性に目を向け、1970年代以降の船員・海運界が歩んできた船員政策の歴史を振り返りながら、日本における船員の確保・育成策と船員問題について、具体的な政策や海運企業のありかたを批判的に模索した作品である。これからの時代に相応しい魅力ある職業としての「船員」を再生させる一書として、示唆に富む内容となっている。

[目次]
はじめに
第Ⅰ部 商船船員へのこだわり
第一章 執筆の動機
1 船員にこだわった人生
2 意気消沈する日本人船員
3 若者の夢に寄り添う
4 重視したい二つの点
第二章 商船船員にこだわる理由
1 時代背景と私の名前
(1)神国日本を信奉した父
(2)父との調和を目指した母の夢
2 海軍船員からの距離感醸成(その1)
(1)貧困な国民国家の時代
(2)船員(職業)生活と現代の若者
(3)海上自衛隊員の〝活用〟
(4)商船系教育研究機関の再編(資本と国家の長期戦略)
(5)商船系教員の苦悩
3 海軍船員からの距離感醸成(その2)
(1)代用教員と高校図書館での思い出
(2)水産大学での思い出
(3)商船大学入学のやり直し
(4)印象に残る二人の先生
(5)先輩船員たちの思い出
(6)戦地へ送る思い
4 軍事要員への誘導環境
(1)競争力強化策の行方
(2)優秀な船員確保策への危惧
5 商船船員と海軍船員の同じ点と違う点
(1)共通点
(2)大きな違い
(3)両者の労働力の特徴
第Ⅱ部 船員(職業)の特殊性とシーマンシップ
第三章 船員(職業)特殊性論の展開
1 海上運送サービスの特徴について
2 船員(職業)の特殊性を構成する三要素
(1)海という厳しい環境に影響されること
(2)長期連続の航海ということ
(3)大量の貨物と多数の船客を運ぶということ
第四章 特殊性の別表現としてのシーマンシップ
1 コインの表側
2 シーマンシップの現代的意義
(1)表現の仕方とその論拠
(2)二要素の追加
(3)シーマンシップ体得の課題
3 シーマンシップの一般化
(1)帆船海王丸(Ⅰ世)の富山誘致運動が契機
(2)県民へのシーマンシップ説明
(3)シーマンシップ一般化の壁
第Ⅲ部 船員(職業)特殊性の軽減策を探る
第五章 海陸職業同一視の諸相と抗いの視点
1 同一視の諸相
(1)同一視する人たち
(2)商船教育研究の混迷
(3)船員の夢を断ち切る指導
(4)手荒な女子への門戸開放
(5)中学・高校の職業指導と船員(職業)
2 海陸同一視策に抗う
(1)商船船員教育補完策の必要性
(2)商船教育の再出発点
(3)市場任せの船員政策批判
(4)重要なアジアにおける歴史的視点
(5)四面環海の日本と日本人船員(職業)の新役割
3 特殊性軽視のリスク
(1)市場至上主義のリスク
(2)真の〝海洋理解教育〟のために
第六章 海員組合の混乱とその影響
1 海員組合混乱の諸相
(1)竹中裁判
(2)北山裁判
(3)その他の争い
2 組合混乱の影響
(1)船員側委員の発言力低下
(2)日本人船員確保への影響
第七章 船員部会(国交省)での議論
1 船員部会の各種情景
(1)顕著な当局の強気発言
(2)〝要望〟事項になる船員側発言
(3)当局と船員(組合)側委員の激論
(4)ILO海上労働条約の国内法化論議
(5)船員部会での政策基調
(6)漁船員の地位向上に関した議論
(7)船員確保育成策に関しての議論
2 船員部会の限界と期待~まとめ~
3 外内航船員経験者からの問題提起
第Ⅳ部 新船員政策のために
第八章 特殊性を克服する諸施策の基本
1 船員制度近代化政策失敗の総括
2 近代化政策破たん要因の探求
3 謝罪の必要性と二つの失敗要因
(1)必要な〝お詫びの言葉〟
(2)二つの失敗要因
4 新船員政策づくりの要点
(1)支援体制の充実と外内航一体化策
(2)船員(職業)特殊性の軽減策
第九章 船員教育研究機関の再構築と船員の新役割
1 再構築へ向けて
(1)行政改革の展開と商船学の動揺
(2)両商船系大学の国策対応と商船学
(3)商船系高専に関して
(4)商船系大学・高専における共通の課題
2 アジアにおける〝共生〟の課題
(1)日本人船員の〝共生〟役割の重要性
(2)富山でのアジア共生への挑戦
3 〝海洋市民〟育成の必要性
あとがき
●著者紹介

[出版社からのコメント]
日本が海洋国家であり、シーレーンが日本の生命線であることは誰もが認めるところですが、その一方で海の仕事に対する関心が高くないことについてあまり意識されることはありません。本書を通じて、船員を始めとする海の仕事に多くの方が関心を寄せるきっかけを持っていただければ嬉しく思います。

[著者紹介]
雨宮 洋司(あめみや・ようじ)

1940(昭和15)年、静岡県富士郡芝富村(現富士宮市)生まれ、富山商船高専名誉教授、専門は海運経済学、港湾論。

《学歴》静岡県立富士高校卒業、東京水産大学漁業学科中退、東京商船大学航海学科卒業、東京商船大学商船学専攻科修了、富山大学経済学研究科修了

《職歴》川崎汽船㈱航海士、運輸省航海訓練所教官、富山商船高専教授、富山大学教育学部教授、同大学附属小学校校長

《単・共著書籍》『機帆船海運の研究』(多賀出版)、『国際交通論』(多賀出版)、『現代海運論』(税務経理協会)、『海運概説』(海文堂)、『現代の海運』(税務経理協会)、『富山湾』(新興出版)、『集客戦略と港湾』(パールロード)、『商船教育時評』(海文堂)、『かがやきのキャッチボール』(富山大学出版会)、『海を越えた心のキャッチボール』(富山大学出版会)

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