
残景:岩谷征捷の文学世界Ⅲ
(著) 岩谷征捷
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―ものを書くということは、失われてゆくものの再生をどこかで信じる行為なのかもしれない―
日常生活では同じ人間の顔に取り囲まれて、群集に埋没し群集の間をぬって歩む男、それは何ものかが待っていてくれるひとつの世界にたどり着こうとして、急いでいる歩行者。互いが互いを変形させ、交錯し、浸透しあい、呼吸し、漂い、そして結局は同じひとつの環境の中に消えてゆく。 いくつものモノガタリが絡み合い反転しながら――。アンリ・トマの「ロンドンの夜」から始まる表題作「残景」をはじめ、文学の地平を進む岩谷征捷の作品世界が再び現出する、『ゆきあひ』『祈りのように』に続く作品集・三部作、ここに完結。
[目次]
残景
不機嫌
チェーホフ『六号病棟』
津島佑子、童子の影
女人往生
くらいふるさとへの旅
ことばがモノになるとき
友を送る
「あとがき」に代えて
岩谷征捷の本
[出版社からのコメント]
文学体験の面白さは、私たちが文字を介して時間と空間を飛び越え、ときにフランツやカフカと対話し、ときに西行や芭蕉と語り合う、その不思議さにあるのかも知れません。誰しも年を経て老いていく中で、文学のもつそうした普遍性に身を任せるのも一興かと思います。そんな時、ぜひ本書をお供の一書として加えていただければ嬉しく思います。
【著者プロフィール】
岩谷征捷(いわや・せいしょう)略歴
一九四二年、北海道留萌市に生まれる(母は、鉄道のガード下から拾ってきた、と言っていた)。本名、征捷(まさかつ)。戦後、札幌市桑園、石狩、稚内市声問、天塩、石狩八ノ沢、手稲、札幌市元村と転居し、小学六年のとき秋田県豊川村(現潟上市)へ渡る。のち秋田市内の八橋、土崎、将軍野と移る。豊川村立豊川小学校から飯田川町・豊川村・昭和町学校組合立羽城中学、秋田市立山王中学、秋田県立秋田高校を経て、國學院大學文学部文学科を卒業(卒論は「芭蕉論‐座の文芸と個の文芸」)。新潮社から小説の原稿依頼があるが没になり、才能のなさを痛感。北海道雄武高校、東京の岩倉高校で教員生活四十五年に及ぶ。『錆群』『シジフォス』『匣』『ホルコス』『暖流』『立像』『風紋』『全作家』『文学街』などの文芸同人誌に参加。その間『北方文芸』『文芸埼玉』に小説を、『ミネルヴァ』『昭和文学研究』に評論、エッセイを発表。『文學界』『群像』の小説・評論両部門の新人賞や『現代文学の発見』(學藝書林)に応募するが、すべて最終選で落ちる。それでも懲りずに書き続ける。現在、埼玉県狭山市在住。
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