『ダーバヴィル家のテス』とヤヌスの神話ーー双極のドラマトゥルギーの謎を解く

(著) 安達秀夫

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[商品について]
―『テス』に隠された双面神ヤヌス―
19世紀のイギリス文学を代表する小説の一つトマス・ハーディ作『ダーバヴィル家のテスーーヒロイン・テスの悲劇的な一生を描いた本作は、なぜか「門」や「出入口」などへの言及が多い。テスの運命を翻弄する二人の男の名前、クレアとアレックは、よく見ると一字違いのアナグラム(字句の入れ替え)。ーーこれらは何を意味するのか? 筆者はそこにローマ神話の双面の門神ヤヌスの隠れた存在を見抜き、ヤヌスを鍵にして物語を読み解いていく。ギリシア・ローマ神話や聖書や、シェイクスピアやミルトンなど、西欧文化史を彩る多様な成果を縦横に駆使しながら、入念に織り上げたテクスチュアから立ち現れてくる、秘められた花にも似たテスのドラマをご覧ください。

[目次]
『ダーバヴィル家のテス』梗概――未読の方々のために
序章 コードとしてのローマ建国伝説とヤヌスの神話
(1)『テス』と西欧文化史
(2)『縛られたプロメテウス』から『アエネイス』、『ルークリースの凌辱』へ
(3)『金枝篇』とヤヌスの神話
第1章 名前の〈二重性〉とアイデンティティ
(1)ヤヌスとしてのクレアとアレック
(2)「自身(セルフ)」をめぐる関係性の劇とアイデンティティ
第2章 アレックによるアイデンティティの分裂とヤヌスの影
(1)冥界の地獄タルタロスへ
(2)冥界からの帰還を願って
第3章 クレアによるアイデンティティの分裂とヤヌスの影
(1)冥界の楽園エリュシオンの野へ
(2)ふたたびタルタロスへ
第4章 悲劇の構造としてのヤヌス
(1)プルトの王国にて
(2)〈青鷺〉の町アルデアにて
第5章 復讐の政治学と魂の救済
(1)〈命名〉によるアイデンティティの支配と復讐
(2)ヤヌスの神話と楽園喪失・回復神話による〈戯れ〉と〈救済〉

引用文献(参照文献を含む)
あとがき
電子版に寄せて──ヤヌスは顕現する
著者紹介

[担当からのコメント]
大学院生だった頃に『ダーバヴィル家のテス』を読んだ著者は、それから30年以上が経ったある日、当時お世話になっていた先生が不意に呟いた言葉を思い出し、それをきっかけに『テス』の世界へもう一度踏み込んでいきます。そんな著者の魂の研究成果とも言える本書、ぜひご一読ください。

[著者紹介]
安達 秀夫(あだち ひでお)
1947(昭和22)年12月、東京都生まれ。
中央大学文学部文学科英文学専攻卒業、同大学院文学研究科修士課程英文学専攻修了。元立正大学文学部教授。

著書
『「ダーバヴィル家のテス」とヤヌスの神話』、文化書房博文社、二〇〇〇年(単著/本書)。(以下は「分担」もしくは「項目」執筆)
『英米文学と言語』、ビビュロス研究会編、ホメロス社、一九九〇年。『異文化の諸相』、日本英語文化学会編、朝日出版社、一九九九年。『読み解かれる異文化』、中央英米文学会編、松柏社、一九九九年。『都市論の現在』、立正大学人文科学研究所編、文化書房博文社、二〇〇六年。『村上春樹 作品研究事典(増補版)』、村上春樹研究会編、鼎書房、二〇〇七年。『トマス・ハーディ全貌――日本ハーディ協会創立五〇周年記念論集』、日本ハーディ協会編、音羽書房鶴見書店、二〇〇七年。『フォークナー事典』、日本ウィリアム・フォークナー協会編、松柏社、二〇〇八年。『新たな異文化解釈』、中央英米文学会編、松柏社、二〇一三年。『文化学の境域』、中央英米文学会編、七月堂、二〇二〇年。その他、フォークナー、ヘミングウェイ、サリンジャー関係論文。

翻訳
レナード・ファインバーグ著『ユーモアの秘密』、共訳、文化書房博文社、一九九六年。

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