なぜわれわれは身近な道具を簡単に捨てられないのか──願掛け・供養から日本人の心を考える

(著) 田中宣一

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作品詳細

[商品について]
――江戸時代に見舞品として赤ダルマを持参するならわしが生じた病気は、次のどれでしょうか。
1.労咳、2.疱瘡、3.コレラ
当時は症状について黒紫だと重く赤色だと軽いというように諸説あったようです。正解は、本書第3章「赤ダルマの意味」をご覧ください。

私たちは、日々さまざまな道具に囲まれて生活している。それらはしょせん道具に過ぎないが、しかしいざ不用となると捨てることにためらいを覚えたり、供養やお祓いのような行動をとることがある。そこには愛着心や感謝の念だけでは説明しきれない道具への気持ち、私たちに染みこんだ道具観とでもいうべきものが潜んでいるのではないか――。本書はそうした観点から、供養という行為を通じて、人と道具のかかわりや生命への共感、ダルマに代表される願掛けのかたちについて、現代もなお私たちの中に脈々と受け継がれ、人間や自然を超越した存在とかかわりながら生きようとする伝承的心意を、具体的事例に即して考察した作品である。

[目次]
はじめに
第一章 道具の供養
職具の供養
【筆供養】
【針供養】
【庖丁供養】
【鋏供養】
衣食具の供養
【時計供養】
【眼鏡供養】
【傘供養】
【下駄供養・靴供養】
【陶器供養・箸供養】
【扇子供養・茶筅供養】
カードと写真の供養
【カード供養】
【写真供養】
【手紙供養】
【道具への思い】
人形供養と仏像の性根抜き
【玩具人形の供養】
【祈願人形のタマシイヌキ】
【仏像の性根抜き】
家屋と船の供養
【家屋の取壊しと供養】
【井戸の埋め戻し】
【廃船と船霊】
道具霊と付喪神
【昔話「化物寺」】
【「付喪神」の道具霊】
第二章 現代の放生会と魚霊供養
放生会について
【放生会の発生と展開】
【放生思想の一般化】
【「浦島太郎」と放生】
さまざまな現代の放生会
【穴子供養】
【ふぐ供養】
【活魚供養】
【鰻供養】
【伊勢えび祭】
【淡路島の漁供養】
【下関のふく供養】
【鰌施餓鬼と身代わり鮒】
魚霊の供養
【鯨の墓】
【海亀の墓】
【一般魚霊の供養碑】
鳥獣草木霊の供養
【伝統的な鳥獣供養】
【新しい動物供養】
【草木霊の供養】
第三章 現代に生きる強請祈願
ダルマへの点睛
【ダルマの登場】
【ダルマ点睛のアイデア】
ダルマの民俗
【ダルマとは】
【起上り小法師とダルマ】
【赤ダルマの意味】
【目無しダルマの用い方】
【ダルマへの願い】
強請祈願の諸相
【祈願の二つ】
【しばられ地蔵への願い】
【てるてる坊主への願い】
【オコゼと山の神】
【成り木責め】
あとがき
【写真・図版協力】
著者略歴

[出版社からのコメント]
現代の私たちは合理的で科学的な思考をよしとする社会に生きていますが、星占いや姓名判断など必ずしも科学的とはいえないものとも親和性のある心を持っているのではないかと思います。そうしたものが私たちの文化や生き方に何をもたらしているのか、ぜひ本書を通じて考える機会を持っていただければ嬉しく思います。

【著者紹介】
田中 宣一(たなか・せんいち)

一九三九年生まれ。
成城大学名誉教授 博士(民俗学)。
祭りや年中行事をはじめ、近現代の民俗の変化について研究。

著書には『年中行事の研究』『祀りを乞う神々』『徳山村民俗誌 ダム 水没地域社会の解体と再生』『柳田國男・伝承の「発見」』など、共編著には『三省堂年中行事事典』『暮らしの革命─戦後農村の生活改善事業と新生活運動』などがある。

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