エッセイ 風の往く道

(著) 喜多村洋子

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作品詳細

わたしは七十七歳の「喜寿」を迎える。昨年、高校同期会の幹事たちが、早々と「喜寿を祝う会」を大牟田市で開催したので、わたしも参加したが、百名ほど集まった仲間たちが交わした言葉は、「とにかく、八十歳までは生きようね」というものであった。わたしは、今年もたくさんの友人知人の死の報に接したが、みんな七十歳代であったことに驚く。平均年齢は年々高くなっているが、やはり八十歳まで生きるのは大変なのである。半年前に一緒にゴルフコースを回った元気な人が、一か月前まで並んで歌っていた明るい仲間が、同じ年齢の優しい従姉妹が、この世から消えてしまうなんて、信じられない思いである。

 特に、たった一人の尊敬する兄の死は、まだ受け入れられないでいる。小さい頃の兄のことはエッセイによく書いた。一緒に遊んだこと、不細工な顔をからかわれたこと、反抗するわたしに拳骨が飛んできたこと、などなど。しかし今、愛する人を亡くした悲しみを、どう表現したらいいのだろう。

 先月のこと。北スペインのサンチャゴ・デ・コンポステラの大聖堂のミサに参加していたら、突然、エッセイ集を出すことを思いついた。その本に、兄の作った最後の「詩」を載せよう。その詩の題『風の往く道』を、兄の筆跡そのままに本のタイトルにしよう……と思ったのだ。

 たまたま今年は、わたしと主人との金婚の年。わたしの喜寿と金婚式を兼ねたファミリーコンサートを、十二月十一日に開く。もう一度、兄の尺八が聞きたかった、という思いが強くある。加えて、このエッセイ集をパーティの記念にしたいと願ったのだ。そこで、前回の『エッセイもカンタービレ』と同じ出版社、日本文学館にお願いすることにしたのである。
 しかし、短期間にエッセイ五十篇をまとめるのは大変な苦しみであった。だが、なんとか金婚式に間に合いそうである。厚くお礼申し上げる。

著者プロフィールーーーーー
喜多村 洋子(きたむら ようこ)
1933年、秋田県生まれ。
1952年、福岡県立三池高等学校卒業
1960年、結婚、一男二女の母。
1989年、「三越」本店・会計管理部を退職。
1990年、「朝日カルチャー・エッセイ教室」へ入会。斎藤信也氏の指導を受け、現在に至る。

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