グラウンド・ゼロの歌 : 短詩型作品によるコンポジション
(著) 住山一貞
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いくさ無き世をよろこびし我なるにツインタワーより吾子は還らず
9.11同時多発テロで息子をなくした父が、自らの想いを短歌・俳句に託す。
「ニューヨークでの出来事を思いおこし、言葉を探しながらそれを定型のなかにはめこんでいった。それは悲しい作業だったが、ひとつの歌が出来ると少し心が癒やされたような気持ちになった。このようにして半年の間に約三十首の歌ができた」(あとがき)
テロ発生、死亡宣告書、遺児の誕生、わずか数グラムの遺骨発見、追悼式――愛する息子を失い、苦しみぬいた日々の記録。後半には短歌の英訳を収める。
平和についてあらためて考えさせられる一冊。
(収録作品より)
野幌(ノッポロ)の林の路に泣きやまぬ吾子を揺りつつ抱きし日もあり
死亡理由「殺人」とある宣告書訳し終ゆれどしばし届けず
悲しみも嘆きもすべて払はむと「爆心」の地につむじ風ふく
骨一つ負ひて名残の花見かな
In my arms,
He didn't stop crying.
I swung him
For a long time on a path under trees.
It was a suburb called Nopporo.
"Cause of death : Homicide"
It said on the form and though
I translated all the words,
I could not for a while bring myself
To hand the form in.
So as to blow away
Our grief and sorrow,
The whirling wind
Blow strongly
At Ground Zero.
Carrying my son's bone,
Remaining cherry blossoms
I view at parting.
【著者プロフィール】
住山 一貞(すみやま・かずさだ)
1937年名古屋市(当時 大高町)に生まれ、主に東京に育つ。
東北大学工学部応用化学科卒。日本軽金属(株)、(財)工業所有権協力センターに勤務、退職。
「昭和万葉集」(1979−,講談社)に触発され、独習、習作を重ねていた。都立日比谷高校同期会記念文集(1999)に発表した「私の昭和万葉集」(15首)が唯一の外部公表作。東京都目黒区在住。
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