セルズ:小さな太陽を内在する驚異の電池の物語

(著) 井上朝廣

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作品詳細

松原文男(まつばらふみお)はかすかな物音を聞いたような気がした。最近はストレスのせいか、夜中によく目が覚める。住居に続いている洋食器の工作工場の方でかすかに物音がしたような気がした。妻の千津子(ちづこ)と娘の久美子(くみこ)が隣で安らかな寝息を立てている。枕元の時計の、夜光塗料を塗った針は午前二時を少しまわっている。
(気のせいか。こんなところに泥棒が入るはずが無い)
文男はもう一度横になって目を閉じた。先週全くの偶然で再会を果たした小学校の同級生のヤッちゃんの顔を思い出していた。
昨日(きのう)も電話を貰った。仲の良かったヤッちゃんは東京の大学を卒業したとは聞いていたが、その後の消息は全く無かった。
(もっと早くヤッちゃんに会えていれば……。これからはきっと良くなる)
いつもはキリキリと痛んでくる腹のあたりがヤッちゃんの事を考えるとポカポカと暖かくなった。また眠気が忍び寄ってくる。
ピシッと枯れ枝を踏むような音がした。(プロローグから)

【著者プロフィール】
著者略歴
井上 朝廣(いのうえ・ともひろ)
昭和13年横浜に生まれる。
昭和20年塩山小学校入学。
鎌倉市立御成小学校、横浜市立日枝小学校を経て横浜市立蒔田小学校卒業。
関東学院中学・高校卒業。
東京工業大学電気工学科昭和37年学部、39年修士課程卒業。
同年(株)東芝入社、火力技術部へ配属。以来国内外の火力発電所開発・計画・設計・建設に従事。
昭和42年メルボルン駐在。
昭和51年より火力技術部計画課長、開発課長、重電経理部見積企画課長、電力企画室長、火力企画室長、総合企画部部長、火力技師長、技監を経て平成10年3月定年退職。
著書
『パンゲニア第1巻』
『パンゲニア第2巻』

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