ソクラテスの哲学:プラトン『ソクラテスの弁明』の研究【電子書籍版】

(著) 甲斐博見

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[商品について]
―哲学に先立つ魂の存在こそ、生の吟味としての哲学を意味づける―
紀元前399年に被告となったソクラテスが裁判で弁明したことをプラトンが叙述したといわれる『ソクラテスの弁明』。本書では、人類の思想的巨人としてあまりにも有名なそのソクラテスの哲学を、『弁明』の記述に基づいて読み解きながらその実像に迫っていく。ソクラテスの生と切り離された単なる学問的考究としてではなく、知力を尽くして人間の生きる現実と真実に近づこうとする人間・ソクラテスの姿が浮かび上がる、新機軸の論考集。

[目次]
まえがき
序章 ソクラテスの哲学 問題提起
一 プラトンの『ソクラテスの弁明』の成立事情
二 『ソクラテスの弁明』の特異性
三 『弁明』のソクラテスの「哲学」の哲学史的な意味づけの試み
第一章 不知の知(18a7-24b2)
はじめに
一 古くからの告訴者に対する弁明
二 自然哲学と人間教育
三 ソクラテスの仕事と知恵
四 デルポイの神の証言
五 弁明の核心部分 ソクラテスの不知の知
六 古くからの告訴者に対する弁明のしめくくり
付記 「生と知がともにそこにある」という表現の背景について
第二章 魂の気遣い(28b3-30c1)
序 J・バーネットの構成理解
一 ソクラテスの哲学的生と死、不知の知と死の問題(28b3-9, 29a4-b9)
二 アキレウスの話と戦場における部処の話(28b9-e4)
三 ソクラテスの守る部処、哲学的生について(28e4-29a5)
四 魂の気遣いの問題へ至るまでの序奏
五 魂の気遣いの勧告(29d1-30c1)
1 ソクラテスの勧告
2 魂の気遣いとその頽落形態
3 真実の気遣い
4 魂の気遣い
付記 魂についての雑感
第三章 言葉の真実を知り、生を吟味する哲学者、およびメレトス論駁(17a1-18a6, 37e3-38a8, 24b3-28b2)
はじめに
一 『弁明』の冒頭部「前置き」について
1 ソクラテスの語り始めの言葉
2 弁論の勇者ソクラテス
3 ソクラテスと市民裁判員
4 裁判員に語りかける言葉
二 生の吟味としての哲学
1 評判(ドクサ)
2 真実の言葉
3 生の吟味のための言葉
4 メレトス論駁
5 ソクラテスの思慮・知(プロネーシス)
付論 ヴラストスのエレンコスについて
第四章 ソクラテスとプラトンの間柄(30c2-33b8, 50a1-54e2)
はじめに
一 魂・徳の気遣いと正義の行動、イディオーテウエイン
二 『クリトン』第二部の問題、国家公共体と国法によるソクラテスの説得
補説 ソクラテスと政治の問題
補記
あとがき
著者略歴

[担当からのコメント]
ソクラテスの哲学は今でも私たちを惹きつける力を持っていますが、それはその根底にいかなる時代の人々も無関心ではいられない「生きる」ことへの本質的な問いが含まれているからなのではないかと思います。ソクラテスの言葉は哲学者にではなく今を生きる全ての人に向けられている、そんな思いでぜひ本書をじっくりと楽しんでください。

[著者略歴]
甲斐 博見(かい・ひろみ)

1948年大分県に生まれる。
1970年大分大学教育学部卒業。
1975年九州大学大学院文学研究科博士課程終丁。同年九州大学文学部助手。
1977年福岡大学人文学部専任講師、1981年助教授。1986年東京都立大学人文学部助教授、1995年同教授を経て、現在首都大学東京大学院人文科学研究科教授。西洋哲学専攻。

〔主要論文〕
「真実を語るということ」(九大『哲学論文集』第16輯、1980年)
「ソクラテスにおける哲学の誕生」(『プラトン的探究』所収、1993年)
「ヴィトゲンシュタインと原始宗教の問題」(都立大学人文学部『人文学報』第286号、1998年)
「パウロとシュリーア」(「福音と世界」(2000―1年)
「ゲッセマネのイエス・キリスト」(同『人文学報』第345号、2004年)

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