公害裁判 : イタイイタイ病訴訟を回想して

(著) 島林樹

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[商品について]
―難しいといわれる公害訴訟の金字塔ともいうべき、不屈の闘争の記録―
娘を連れて初めて帰省した昭和42年の夏、私は役場の広報誌でイタイイタイ病検診の記事を目にした。それが東京弁護士会に登録して二年目の新米弁護士であった私と事件との出会いだったーー富山県神通川流域に流される鉱毒により、長年にわたって住民に甚大な健康被害を与えてきたイタイイタイ病。本書は、三井金属神岡鉱業所を相手に損害賠償を求める訴訟に立ち上がった被害住民たちと共に闘った、ひとりの弁護士の回顧録である。提訴から判決までの訴訟の経過を中心に事件当時に発表した小論も併録した、イタイイタイ病を後世に語り継ぐ貴重な一書。

[目次]
はじめに
第一章 イタイイタイ病訴訟を回想して
一 事件との出会い
二 提訴に立ち上がるまで
三 原告弁護団の結成
四 提訴
五 厚生省による公害病認定
六 口頭弁論(第一回)はじまる
七 立証方針をめぐる原告弁護団の討議
八 訴訟進行にかかる裁判所・被告との対立(第二回口頭弁論)
九 本件訴訟の主な争点(第三回口頭弁論)
一〇 現場検証(第一回)における論争
一一 忌避申し立て後の経過
一二 被告の応訴方針(第四回口頭弁論)
一三 科学者の証言(一)(富山大学教授 深井三郎)
一四 科学者の証言(二)(金沢大学教授 石崎有信)
一五 科学者の証言(三)(同 石崎有信)
一六 科学者の証言(四)(岡山大学教授 小林純)
一七 科学者の証言(五)(萩野病院院長 萩野昇)
一八 住民一三名による生活体験の証言
一九 現場検証(第二回)及び被告の内部文書の告発
二〇 新たな課題(汚染米不買と汚染土壌復元問題)
二一 被告側の反証(一)(神岡鉱山病院院長 富田国男医師の証言)
二二 被告側の反証(二)(鉱山防止施設、鉱山調査及び対策など会社関係者四人の証言)
二三 被告側の反証(三)(神岡鉱業所周辺及びその上流の住民六名の証言)
二四 原告側の損害立証(一)(遺族原告四名の供述)
二五 原告側の損害立証(二)(遺族原告一名、患者原告八名の供述)
二六 原告側の損害立証(三)(遺族原告一名の供述及びイ対協会長小松義久、萩野医師の証言)
二七 鑑定対策の準備及び被告側の反対尋問
二八 被告の鑑定申請に対する意見陳述(第三二回口頭弁論)
二九 被告側の反証(四)(村田勇、吉田穣、稲本猛、萩野昇及び安井格の各医師五名の証言、患者原告浦本ヨシの反対尋問)(第三三回及び第三四回口頭弁論)
三〇 鑑定却下、被告の裁判官忌避申し立て(第三五回口頭弁論)
三一 弁論終結前後の事情
三二 判決言い渡し及びその後の交渉
三三 被告の控訴と医学会の不穏な動き
三四 控訴審における原被告双方の主張立証
三五 被告申請の科学者証人を採用
三六 金沢大学教授武内重五郎の証言
三七 武内証言に対する原告側の反対尋問
三八 高裁判決及びその前後の事情
第二章 イタイイタイ病訴訟に関する小論として
一 「イタイイタイ病」をめぐる諸問題
二 私の人生観―善意からの脱皮へ―
三 公害における法律家の役割
四 早急に公害総点検を
五 イタイイタイ病訴訟の経過と判決の意義
六 被害住民の要求と判決が明らかにしたもの
七 仕組まれた学術研究会
八 イタイイタイ病裁判の現状
九 イタイイタイ病裁判(第一次訴訟)における法的発展
一〇 萩野博士を偲んで
一一 敗北の歴史から勝利へ
第三章 イタイイタイ病訴訟の語り部として
イタイイタイ病訴訟から学んだこと
イタイイタイ病裁判を通じて生命の尊さを考える
〈資料編〉
一、弁護団の声明文
二、訴状
三、訴状陳述にあたっての補足意見
四、答弁書
五、原告準備書面(第二回)昭和四三・九・二付
あとがき
著者略歴

[担当からのコメント]
水俣病や四日市喘息とともに四大公害病のひとつに数えられるイタイイタイ病。そのイタイイタイ病の被害者たちや弁護団が、弱者の最後の砦である司法の場で如何に闘ったのかを具に語ったのが本書です。力のないものが虐げられるような社会であってはならないという想いが、時代を超えて読むものの胸を打ちます。人と人が共生する社会について考えるうえでも示唆に富む本書、ぜひご一読ください。

[著者略歴]
 島林 樹(しまばやし・たつる)

・1933年富山市に生まれる。
富山中部高校、中央大学法学部卒業。
・1966年弁護士登録。以後主に交通事故、公害、医療過誤、学校事故、製造物責任、国家賠償など各種の不法行為訴訟及び自動車、火災、傷害など各種損害保険関係訴訟を担当し、現在に至る。
・弁護士として関与した主な訴訟事件
イタイイタイ病訴訟、富山大学教授会紛争・単位不認定違法確認請求事件、国道41号線雪崩事故国家賠償請求事件、都営住宅強制明渡請求事件、不当逮捕国家賠償請求事件、横田基地航空機騒音訴訟、酩酊交通事故者内出血看過事件、自動車保険債権者代位請求事件、阪神淡路大震災保険金請求事件、モルジブ水死事故保険金請求事件などモラルリスク事案多数。
その他、業務上過失致死傷被告事件など刑事弁護人として無罪判決(4件)を担当する。

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