実現と表現:時間が生み出すもの【電子書籍版】

(著) 友永幸二郎

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作品詳細

デカルトは17世紀西欧の近世を生きた。思索生活に入り、思索を深めると、疑わしきものを排除し、明晰なものを求める思想へ到達した。この思想態度は明晰なものの構成でしか成り立たない科学技術の基底を成し科学世界を拡大してきた。だが排斥された疑わしきものの中に在る要素価値が見失われた。

 『方法序説』においてデカルトは、近代精神の基本となる精神の明晰判明なる特質を基礎づける一方、神の観念を一身に背負うのではなく、遠くに見るという位置を確保した。神を遠くに見るということにより歴史的に新しい精神の領域を開拓する。
 疑わしいものを排除し、精神を使う規則に従って、前方に在る対象を見た。デカルトは前を見た。デカルトは近代へと逃れることに成功した。新しい精神空間の開明であり、新しい精神の光景が見えて来る。
 デカルトは近代の入り口にいて、中世のキリスト教文化からまだ断絶していなかった時代状況において、科学的精神の強い欲求の奥に、神への眼差しを背負ったことがデカルトの精神に大きな広がりを与えている。しかし、それ以後、科学の発展した世界では精神の広がりは見失われた。明晰であるものへの傾斜は人の精神活動から背後をなくした。(本文より)

【著者プロフィール】
友永 幸二郎(ともなが・こうじろう)
1969年 東京大学文学部美学科卒業
書籍 『「実現と表現」―時間が生み出すもの』発行レーヴック

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