帰らざる旗:ある少年水測兵の戦争実話
(著) 河本義夫
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―戦争という日常の現実―
昭和16年12月8日早朝、大本営報道部将校の絶叫が日本中に響きわたり、日本はアメリカとの戦争に突入した。卒業後の進路をめぐって落着かなかった高等二年の私は、海軍へ志願し、やがて対潜の先駆となった第一期少年水測兵として激戦直中の軍隊に身を投じた。厳しい訓練の後に対潜の旗艦となる軍艦「白鷹」に配乗され、拒否することが許されない環境と、巨大な鉄の棺の中で航海と載炭を繰り返す日々に暗澹たる思いを抱くようになっていた私に、やがて人生にただ一度といってよい幸運が巡ってくる――。
美化されることのない戦争の現実を、一兵卒の目線で描いた自伝的小説。
[目次]
前書き
激 動
黒い波涛
第一期少年水中測的兵
海軍少年研究生
余話一斑(ぱん)(ちょっと風を入れる)
哀しき歓送場
海兵団という塀の内側
時代錯誤の陸戦教練と教班長という名の熟練下士官
戦艦「大和」垣間見る
愚 直
再び教班長の形影
さらば海兵団、回り道は遠かった
海軍機雷学校?
絶対音感
山で聴く魚の声
左 遷
軍艦の枷(かせ)
水に浮かぶ鉄の檻 ── 艦内の一日
水に浮かぶ鉄の檻(二) ── 暗夜の震撼
艦長の不適材不適所
省エネ艦の酷 ── 鴉の舞
落 差
聴音室または奈落の底
兵士の値段・哀れ輸送船団
そして明暗
黒の終章、双菊の柩
後書き
[出版社からのコメント]
戦争に反対するかどうかを問わず、戦争に関する物語は悲劇性や残酷さを強調するという点で同じベクトルを持っているように思います。そこからは、理不尽な日常と死への恐怖の終わりのない反復という物語性のない戦争の姿が抜け落ちてしまいます。多くの方が本書の中に抜け落ちてしまった戦争の姿を感じていただければ嬉しく思います。
[著者プロフィール]
河本 義夫(かわもと・よしお)
昭和二年、鳥取県生まれ。
学歴は最少。職歴は雑多の波乱人生。
昭和十七年、開戦へき頭、十四歳で海軍第一期少年水測兵志願。十八年軍艦「白鷹」にてパラオ、ニューギニア方面転戦。二十年海防艦「宇久」探信儀員長。東支那海方面転戦。
戦後、学歴社会の壁で理想または志と現実が背反し、不本意な職業を転々とする。
農業、土木作業員、各種外交員、菓子製造見習、映画館フィルム運搬員、ガリ版工、塗装工、看板工等。いずれも学歴不問分野。
かたわら文芸に親しみ、読み書きによって心が洗われ、人生開眼。
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