戦後の婦人教育を築いた詩の少女、金子ていの生涯──白秋、茂吉、外村繁との出会い──

(著) 荒井進

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作品詳細

[商品について]
―しづかな日和だよ。 何にもないのに みんなが笑っている。―
大正の初め、近代詩と併行して啓発されていた新しい童謡創作の流れを受けて、鈴木三重吉によって発刊された月刊誌「赤い鳥」。本書は、児童文学を通して新たな人間性尊重教育を目指したこの児童文芸誌で、天才的な童謡・自由詩の詩人として活躍し、北原白秋によって絶賛された「詩の少女」金子ていの生涯を、同じ山形の同郷人である著者が敬愛の念をもって追った作品である。「赤い鳥」での活躍や作品の紹介、北原白秋との出合い、斎藤茂吉とのかかわりだけでなく、あまり知られていない文部省初の女性課長や婦人教育の先駆者、文人としての良き妻、先妻の子5人のよき母としての顔も持つその人生を描いた一書として、貴重な内容となっている。

[目次]
[金子ていの生涯を綴る]
序章
発刊にあたって
金子ていの略歴と生いたち
金子ていの略歴
金子ていの生い立ち
第一章 「赤い鳥」と詩の少年少女
(一)「赤い鳥」と子供の詩
「赤い鳥」のねらいと児童文学
「赤い鳥」のモットー(標榜語)
文壇の錚々たるメンバーが投稿
児童文学の代表作「蜘蛛の糸」と芥川龍之介
茂吉に学ぶ「芥川龍之介」
「赤い鳥」の功績
(一)文壇の有名作品を生む
(二)新しい日本の童謡・児童自由詩・自由創造の教育(年少文学)
(三)童話・童謡作家の育成・名作を生む
日本の子供の詩(作文の会山形)
山形県児童詩指導の歩み
日本子供の詩など指導にあたった先生たち
日本の子供の詩(編集するなどの指導者)
北原白秋(太田天龍・山口喜市)先生との出合い
金子ていの思考と北原白秋のねらい
金子ていの作品
金子ていの母校「堀田第二小(現山形市立蔵王第二小学校)」“茂吉も先輩”
(二)朝倉高文「てい」の研究
金子ていを研究する資料
「金子ていのことども」
「赤い鳥」の友だちが語る
第二章 児童自由詩と白秋
(一)堀田二小・椹沢小などの活躍
金子ていのほか堀田二小の子供たちの作品
堀田二小・椹沢小など児童の活躍
北原白秋より堀田二小など童謡と自由詩について絶賛される。
南村山郡椹沢小学校(山形市立宮浦小)の大活躍“全国一の投稿”
自由詩の指導者 山口喜市先生の作品
山形市史(近現代編)に金子ていが紹介されている。
須藤克三金子ていのこと、切り抜き帖から
第一高女時代の「てい」について
(二)北原白秋編(児童自由詩)
解説 北原白秋
白秋のおもい 白秋全集から
白秋全集33 鑑賞指導1
第三章 外村繁(とのむらしげる)との出合い
(一)小説家外村繁との結婚
作家 外村繁
――外村繁の略歴――
「金子てい若き想いを語る一節」
少女のころ、女子大、職業婦人……ひとこま。
(二)文部省での婦人教育活動
女性初の婦人教育課長に
外村ていがGHQと婦人教育問題で苦労したことについて(塩課長談)
戦後における文部省の婦人教育
[婦人連盟結成]
外村繁、妻の郷里に度々訪れる。
斎藤茂吉が日本女子大学入学時の保証人に
外村繁・てい夫妻のこと、佐々木悦さん語る。
(三)近江商人のふるさと
作家「外村繁」のふるさとと生いたち
近江商人と山形
朝日新聞で紹介される
第四章 外村繁作品・文学碑建立
(一)「てい」のふるさとと外村繁
外村小説「東北」山形を描く
外村繁作品
(二)金子てい 外村繁 文学碑が建立
◇外村夫婦を想う
外村晶・(長男)、父の手紙からの一節
夫婦善哉とは正に外村夫婦!! 小山諄積さんが語る
(三)「日を愛しむ」映画化に
あとがき
[補完編]
序章
―活躍した山形の女性― 金子ていの生涯について
女性の地位向上と婦人教育に捧げた人生
第一章 大正、昭和初期の婦人組織の動き
(一) 大正昭和初期の動き
●浜口内閣の婦人層の積極的な活用政策
●東京連合婦人会日本初の首相との会談
●婦人団体の全国組織化
(二) 婦人の地位向上や教育に取り組むスタート
●満州事変の勃発による婦人団体の軍事援助活動へ
第二章 戦後の婦人教育施策
(一) 再発足の社会教育局の具体的施策
●山形県婦人連盟が全国第一号
●全国的婦人団体の組織化が推進
(二) 第一回婦人教育研究会の成功にと奔走
(三) 苦境に立つ文部省の婦人教育(GHQとの調整役として苦慮)
●GHQと婦人教育問題で苦慮(塩課長談)
●婦人民主クラブ結成の動き
●婦人教育指導者講習会が開催(全国をかけまわる。「てい」)
(四) 婦人教育関係の予算が計上される
●民主化教育の理念にもとづく婦人団体が認知される
●戦後初の総選挙―婦人参政権行使
(五) 地域婦人会の組織化
(六) 婦人教育の進路 ―戦後十年を振り返って―
(七) 全国(地区)教育研究集会が開催される
(八) 都道府県における婦人学級
●文部省研究学級の開設
●文部省委嘱婦人学級の実施
●社会教育における婦人学級のあり方について
(九) 社会教育行政における婦人教育の拡充
(十) 婦人教育の振興に画期的予算が
第三章 婦人教育課が誕生
(一) 設置要旨
(二) 文部省婦人教育課の事業
●婦人教育の振興の充実
(三) 初代婦人教育課長外村(金子)ていの教育年表(昭和36年)
小説家 外村繁(とのむらしげる)と結婚(昭和二十五年)
●結婚そして子育て多忙の「てい」
●長男への手紙
筆者の思い
[補完編] あとがき
[補完編] 文献参考資料
著者略歴

[出版社からのコメント]
自由詩や自由画の創作者としての金子ていは知っていても、女性初の婦人教育課長として戦後の婦人教育に情熱を燃やしたことを知る方は少ないかも知れません。その意味で本書は、彼女に関する資料が少ない中で人間としての金子ていの実像を知る貴重な作品になっていると思います。作品鑑賞の参考書としても、日本の教育史の一端を知る資料としても、お楽しみいただける内容になっています。

【著者略歴】
荒井 進(あらい・すすむ)

昭和十四年三月二十八日山形市蔵王上野に生る。
堀田第二小学校(現山形市立蔵王第二小学校)・中央大学法学部卒業。

(経 歴)
更生保護法人羽陽和光会理事長、NPO法人スペシャルオリンピックス日本山形理事長、山形商工会議所議員、㈱山形環境荒正会長、山形県アイスホッケー連盟会長、NPO法人やまがたの木住・環境共生ネットワーク理事長、元山形県PTA連合会会長、元山形青年会議所理事長、元山形県議会副議長、文部大臣表彰、藍授褒章受章、県教育功労者表彰。

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