政治・経済、そしてスポーツ: 競争の現代的意味

(著) 杉崎隆晴

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作品詳細

スポーツの意義を論じる際に特に気を付けなければならないこととは、その社会的・心理的意義をも視野に入れた総合的な見解を示すということである。即ち「スポーツを行うことはよいことだ」というような場当たり的な意見ではいけないのであり、スポーツの本質を見据えた確固たる論理形成をこそ、その信念とせねばならないのである。

 その視点から書かれた本書『政治・経済、そして、スポーツ 競争の現代的意味』は、スポーツにおける哲学的・倫理的(道徳的)意義、社会的意義、心理的意義が総合的に論じられており、目の覚めるような見解が散りばめられている。「スポーツとは何か」「今、何故スポーツなのか」「スポーツを行うことにはどういった意味があるのか」といったスポーツに対しての哲学的疑問にまで着手しており、スポーツを単なる「純粋に勝敗を争う競技」とか、「健康増進のための手段」としてのみ捉えてはいけないということが分かる。

 スポーツとは、具体的には世界とのCommunicationであり、またcommon senseである。したがってスポーツが健全に発展することと、全社会的な信頼関係が築かれることとは平行しているはずである。その意味からCommunityとしての政治・経済関係をも視野に入れた普遍性のあるアプローチが重要となってくる。

 それと共に、スポーツにおける心理的意義も重要である。スポーツの語源である「気晴らし」に依拠して、スポーツを単に「ストレス解消」のための手段と単純に考えるのではなくて、攻撃行動や欲求階層(マズローによる)といった心理学理論を踏まえて考察するとともに、フェアプレイ精神やアマチュアリズムとかいった哲学的分野にも踏み込まなければならない。多くの心理学者は、サイコロジーの語源が、精霊の中でも特に人間の精霊を扱う哲学的研究分野を表す言葉であったことを忘れている。

スポーツとはそんな奥深い、哲学的な世界観なのだということを本書はくまなく教えてくれるのだ。

 つまり本書は、スポーツの社会的意味からスタートし、最終的にはそれを心理的意味へと拡張する形で書かれている。その際、「競争」「興奮」「非暴力的」「道徳的」「アマチュアリズム」といった概念を導入し、理論構成を確固たるものにしているのである。実に驚くばかりだ。

杉崎隆晴(すぎさきたかはる)
1948年東京生まれ。評論家。

本名が珍しいため有名になった時に困ると思い、中学3年生の時に、このペンネームを作った。
小学校の時、常にクラスで1、2番の成績であったが、おかしいと思ったことはすぐに言葉に出していたため理屈っぽいと思われて、普通は成績のよい子が選ばれる学級委員に一度も選ばれることがなかった。特に、6年生の時は、各学期で男子2名女子1名が選ばれていたので、成績が1番の著者は、人気投票で30名中6名(当時の1クラスは50名以上!)の中に選ばれなかったことになる。
 高校時代、学校新聞へ学校批判の論文を投稿したが、恩師が、結婚式でそれを紹介した。かなり過激なものだったので皆びっくりしたようだったが、投稿動機は、学校新聞への学校側の介入にあった。匿名の投書を新聞部顧問が認めなかったので、その部分を白紙にした新聞が発行された。友人が編集長だったが、彼によると、次の号でそのことを問題にしようとしたが掲載拒否にあっとのこと。そのため、「じゃ、実名ならいいんだろう」と言って書いたのがこの投稿であった。彼の対応は、左翼陣営にとってオーソドックスな対応であるが、実効性のあるこのような行動選択が著者の行動様式である。この投稿が縁で、小学校時代に学級委員にも選ばれなかった者が自治会の執行委員長になった。
 大人になっても、世の流れを無視して直言し行動する性癖は直らず、職場や学会等の社会活動の場で現状批判の議論をダイレクトに展開するため世の中から疎んじられるが、それが世直しに繋がると信じて行動し、その成果を『国立大学:権力構造の謎解き』(三一書房)として出版した。本書は評論家としての第2作だが、直接経験を踏まえた議論を展開していることは高校以来の性癖であり、前作同様である。なお、体験した事実の記述にあたっては、実名投書と同様に、自らの責任を明らかにする意味で、個人名以外は原則として実名とした。
 長年、本職である国立大学の教官として、教員になる学生に、体育心理学とサッカーを教えて、税金で食わせてもらっていた。法人化によって「教官」から「教員」になり自由に活動できるようになると喜んだが、国立法人には税金が大量に投入されているためか規制が多く、本書にも書いたように、市会議員に立候補する野望は、「みなし公務員規定」により実現しなかった。
 しかし、大学人の本務は教育である考えているので、税金をもらう理由である心理学と実技の分野では、それなりの学習指導をしており、さらに、ある程度評価されている本を出版しているので、税金泥棒にはなっていないと自負している。現在、実技分野では、指導経験を集大成した指導書シリーズを刊行中である。 

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