日本の国立公園成立史の研究:開発と自然保護の確執を中心に

(著) 村串仁三郎

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作品詳細

[商品について]
――現在では観光地として人気の尾瀬ですが、国立公園に指定される発端となったのは次のどれでしょうか。
1.戦争による疎開、2.水力発電事業計画、3.オリンピック招致
正解は、本書「3.2.1 大正期の尾瀬の国立公園指定運動と自然保護」をご覧ください。
登山やスキー、釣り、キャンプ、自然観察、観光、保養など、レクリエーションやスポーツの場となり、多くのレジャー資源を供給している国立公園。しかし徹底して自然が保護されている欧米先進国の国立公園と異なり、日本の国立公園は指定された地域の自然や風景、歴史遺産の徹底した保護の規定をいちじるしく欠いているため、つねに開発やびレジャー・観光利用の脅威にさらされてきた。本書は、日本の国立公園をレジャー論・観光論の立場から研究し、その本質や問題、あり方を究明すると共に、自然保護の視点からアメリカ国立公園史の研究をもとに日本の国立公園研究を見直し、近代日本の自然保護史の一端を明らかにしようとする試みである。

[目次]
はしがき
第Ⅰ部 日本の国立公園制定史
第1章 明治期における国立公園思想の萌芽
1.1 明治期における国立公園思想の萌芽と自然保護
1.2 日光山の国立公園設立の請願
1.3 富士山の国立公園化の請願と国会論議
第2章 大正期における国立公園の思想と政策の形成
2.1 大正初年代の国立公園論の浮上
2.2 大正10年代の内務省の国立公園政策
第3章 大正期における国立公園論争
3.1 開発利用派と自然保護派の論争
3.2 論争の総括
第4章 国立公園法制定の準備過程
4.1 国立公園制定運動の再開
4.2 『国立公園』誌にみる国立公園論
4.3 国立公園協会の活動と国立公園調査会の設立
第5章 国立公園法の制定と法の問題点
5.1 国立公園法と国会での法案審議
5.2 国立公園法の問題点
5.3 国立公園の選定基準の決定と12国立公園の指定
第Ⅱ部 主要な国立公園の成立過程
第1章 富士箱根国立公園――(1) 富士山
1.1 明治期~大正9年の富士山の観光開発と自然保護
1.2 大正10年~昭和3年の富士山の国立公園設立運動と自然保護
1.3 昭和4年以降の富士山の観光開発と国立公園設立運動
第2章 富士箱根国立公園――(2) 箱根
2.1 大正10年以前の箱根観光開発と国立公園論
2.2 大正10年以降の箱根の観光開発と国立公園指定運動
第3章 日光国立公園
3.1 日光国立公園――(1) 日光
3.2 日光国立公園――(2) 尾瀬
第4章 中部山岳国立公園――(1) 上高地・白馬
4.1 上高地の国立公園設立運動と自然保護
4.2 白馬の国立公園指定運動と自然保護
第5章 中部山岳国立公園――(2) 立山・黒部
5.1 立山の観光開発と国立公園指定運動
5.2 黒部の国立公園指定運動と自然保護運動
第6章 その他の国立公園 ――十和田国立公園と吉野熊野国立公園
6.1 十和田国立公園
6.2 吉野熊野国立公園

あとがき
〈著者紹介〉

[出版社からのコメント]
環境保護と開発の関係は私たちが直面する最も重要な問題のひとつですが、本書は国立公園という視座からこのテーマに切り込んだ作品として、読み応えのある内容となっています。法の整備や市民運動など、私たちが民主国家の主権者としてなし得ることを改めて考えるための一助として、ぜひ多くの方に手に取っていただければ嬉しく思います。

【著者紹介】
村串 仁三郎(むらくし にさぶろう)

略歴
1935年10月 東京生まれ。
1959年3月 法政大学社会学部(2部)卒業
1969年3月 法政大学大学院社会科学科経済学専攻博士課程単位取得
(1982年3月 経済学博士取得)
1969年4月 法政大学経済学部特別助手
1970年4月 法政大学経済学部助教授
1980年4月 法政大学経済学部教授
2005年3月 法政大学経済学部定年退職
専門
労働経済論,鉱山労働史,レジャー・観光論,国立公園論

主な著書
『賃労働原論―「資本論」第一巻における賃労働理論―』(日本評論社,1972年)
『賃労働理論の根本問題』(時潮社,1975年)
『日本炭鉱賃労働史』(時潮社,1976年)
『明延鉱山労働組合運動史』(恒和出版,1983年)
『日本の伝統的労資関係―友子制度史の研究』(世界書院,1989年)
『孫育てイギリス留学日記』(崙書房,1995年)
『日本の鉱夫―友子制度の歴史』(世界書院,1998年)
『レジャーと現代社会』(編著,法政大学出版局,1999年)
『国立公園成立史の研究』(法政大学出版局,2005年)
『大正昭和期の鉱夫同職組合「友子」制度』(時潮社,2006年)
『自然保護と戦後日本の国立公園』(時潮社,2011年)
『高度成長期日本の国立公園』(時潮社,2016年)
代表的論文
「マルクス欲望論の問題点と研究視角」(上下)法政大学経済学会誌『経済志林』第40巻第4号,第41巻第1号
「研究回顧・『資本論』から鉱夫の歴史・レジャー・国立公園の自然保護史への研究へ」(上下),『大原社会問題研究所雑誌』No.565,No.566(2005年12月,2006年1月)
最近発表の国立公園関連論文
「高度成長期における中部山岳国立公園内の立山観光開発と自然保護運動」『経済志林』第86巻第1号,2018年6月
「高度成長期における主要国立公園内のマイカー規制問題」『経済志林』第86巻第3・4号,2019年3月
「日本の国立公園に関する3拙著に対する土屋俊幸教授の批評に答える」『経済志林』第87巻第1・2号,2019年9月
「『立山黒部』世界ブランド化」構想とそれに反対する自然保護運動」『経済志林』第88巻第1・2号,2020年10月
「序章 現代日本の国立公園研究の方法論―第Ⅰ部・環境庁管理下の国立公園研究①―」『経済志林』第87巻第3・4号、2020年3月
「環境庁管理下の国立公園制度の基本的枠組一第Ⅰ部・環境庁管理下の国立公園研究②―」『経済志林』第88巻第1・2号、2020年10月
「環境庁管理下の国立公園行政管理機構一第I部・環境庁管理下の国立公園研究③―」『経済志林』第88巻第4号、2021年3月
「山梨県の富士山鉄道構想についての批判的考察」『経済志林』第88巻第4号、2021年3月

本書は財団法人法政大学出版局より刊行された『国立公園成立史の研究 開発と自然保護の確執を中心に』(2005年)をもとにした電子書籍です。

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