歌集 花の想ひで いのちの四季シリーズ

(著) 吾妻國年

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作品詳細

[商品について]
―言葉が生み出す想念は、こんなにも豊かな色彩を創り出す―
ゆく夏の流水(ながれ)に遊ぶ水鳥に 涼風吹きて葦蘆(あしよし)語る
くれなゐの花水木の実のつややけく 首飾りのごと碧空(あをき)に映えり
バスガイドの「長崎の鐘」に病臥(ふ)す妻の 孤影(すがた)ゆらめき涙あふるる
灼熱の紅蓮(ぐれん)の焔(ほのほ)B29は 焼ける夜空にアキアカネの如しと
冬枯れの上野の森に「道」ありて あはき追憶われをめぐれり
(本書より)
生きることの中にある詩想を三十一文字の思索にのせた140余りの短歌と、より豊かなイメージへと見るものを誘う写真やイラスト画像を添えて編んだ観念と祈りの短歌集。

[目次]
白鷺 ふるとねの四季
ゆく夏の
風立ちぬ
餌食漁る
野の草の
紺青き空
金色に
みぞれ降る
浅瀬にて
春や春
のどかなり
風薫る
御父の
くれなゐの
ひっそりと
いづくより
家族の肖像
バスガイドの
紫陽花の
痛苦み臥し
花影に
産の屋の
沈丁花
むらさきの
色々の
炎熱の
笛吹の
祖父口誦
麗美の
わが祖母は
灼熱の
幼き日
渚あそぶ
旅の空
山の端に
みづうみの
星空は
ローレライの
はまなすに
穹蒼く
被爆の地
湖水炎上
福音を
上野不忍池
桜花満ちて
見あぐれば
「家路」さそふ
差し脚で
秋の夕陽に
冬枯れの
冬景色に
忘れまじ
園内を
王陰謀む
薄命の
魅せられて
調べ
人往き交ふ
夜はふけぬ
湖の
夕陽は沈む
チェロの音色が
はるかなり
新緑の
古典のこころ
 ギリシアへの憧れ 哲学の道 「古事記」によせて
新書棚
王子の遺骸
酒宴闌けて
川岸で
老犬は
無為を蔑し
天体の
戦慄つつ
「人の世の
「花は咲き
ソクラテス
金銭や地位
恩師ゆゑ
遥遥と
《哲学の道》の
呪詛看破
フィロソフォスの
かぐはしや
哀しみの
循環ゆく
若冲の
須佐之男の
素兎の
背の君に
野火にまさる
足柄の
御杖重し
人生の
花の影
 初夏 秋 雪 春風
今日われは
木漏れ日の
窓辺には
窓明かり
車軸洗ふ
かなかなと
炎暑遊舞ふ
縁に座し
完熟の
豊潤の
あかねさす
射落さるる
真白なる
月はまとか
転生の
木枯らしに
さやさやと
足もとに
白雪の
雪やみぬ
寒椿
笛吹川に
白梅かをる
早咲きの
潮風の
桜花愛でる
道の端は
風さそふ
ソロモンの
あとがき 付・追記
著者略歴

[担当からのコメント]
短歌や詩の魅力は言葉が生み出す情景を言葉として楽しむことにありますが、本書では短歌に写真やイラストを加えることによって、ときに共鳴しときに不協和音となって現れる立体的な文学世界を生み出す試みがなされています。これまでとは少し味わいの異なるこの歌集を、どうぞごゆっくりお楽しみください。

[著者略歴]
吾妻國年(あづま くにとし)
1941年、東京・墨田区生れ、戦災疎開中に東京大空襲(両親死亡)。
1963年、東京神学大学神学部入学。
1969年、同大学院修士課程神学研究科(組織神学)修了。同年、日本基督教団神戸栄光教会へ赴任(補教師准允)
1972年より東洋英和女学院中高部教諭(聖書)、高等部長、同学院副院長歴任。

〈著書〉
「歌集 白鷺の詩」 文芸社 2008年
「歌集 いのちの四季に(歌集とエッセイ)」 教文館 2014年

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