消えた王国ーー日高見国(ひたかみのくに):知られざる東北の歴史

(著) 中津攸子

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[商品について]
―東北は、文化果つる「みちのく」ではない―
有史以前から存在する独立的な国として『日本書紀』や『常陸国風土記』にもその名が見られる「日高見国」。東北を中心に存在したこの国は、中央政権による侵略を幾度も跳ね返しながら豊かな社会と独自の文化を育んできた。しかし最終的に中央政権に屈し征服されたことにより、その存在は歴史の霧の中へと消え、現在ではその痕跡を辿ることさえ容易ではない。本書では、そんな歴史の向こうに消えた「日高見国」の痕跡を探し巡り、その所在地から仮名をはじめとする日本文化、奈良の大仏の黄金の謎、そして独立王国の終焉まで、さまざまな視点からその実像を明らかにする。

[目次]
はじめに――なぜ、今、日高見国を語るのか
第一章 日高見国と中央政権
記録から消された日高見国
日高見国の痕跡
日高見の記録と古代から続く旧家「安倍氏」
倭から大和へ
「倭」の意味
崇神天皇と四道将軍
日本武尊の遠征
日本武尊は役職名
日高見国はどこにあったか
行基図
伊万里焼日本図皿
石川流宣の日本図
東北のない日本地図
伊能図
日本の国号
天皇の称号
応神王朝と日高見国
摂政・神功皇后
三百年の和平
〝新王朝〟の根拠
日高見国を陸奥国と命名
西の倭国、東の日高見国
「陸奥国」の由来
第二章 日高見国が育んだ、日本古来の文化
歌の宝庫
万葉集に東北の歌は四首のみ
「歌枕見てまいれ」
武将も歌を詠んだ日高見国
日高見国は歌の母なる地
宮中を席巻した日高見の文化
かなの発明と古代文字
漢字だけでは表現できない日本の言葉
万葉仮名
かなの発明
万葉集、古事記はどのように伝わったのか――古代文字
今後明らかになる、古代文字
第三章 大化の改新前後の中央政府と日高見国
大化の改新と征夷
大化の改新
五畿七道
日高見国の抵抗
齶田と渟代(ぬしろ)の攻略
侵食する中央勢力
六カ国からの移民
東北の防人
征服された人々の生活
勿来の関と防人
第四章 北方警備と日高見の馬
馬どころ・東北
東北の馬「そうぜん」
北方警備と日高見産の兵馬
馬は日高見
歴史を彩った名馬たち
馬をこよなく愛した人々
第五章 日高見国の黄金
奈良の大仏
奈良の大仏に塗った黄金
黄金(こがね)は日高見語
こがねと真がね
莫大な黄金はどこからもたらされたのか
孝謙天皇
孝謙天皇と道鏡
正倉院の御物と日高見国
継承者
藤原氏の動き
世界を動かした日高見国の黄金
第六章 東北の独立国滅亡までの朝廷との関わり
人口増と口分田
新田百万町歩の開墾
出羽柵攻防
伊治呰麻呂(これはるしまろ)の乱
多賀柵と多賀城
柵と城の違い
多賀柵から秋田までの道
多賀城の碑
若きリーダー・阿弖流為
桓武天皇の大望
ゲリラ戦に翻弄される中央政府軍
戦果のなかった日高見国攻略
坂上田村麻呂と阿弖流為
阿弖流為逝く
征夷終結
独立王国への布石
安倍氏、在庁役人となる
貞観地震・大津波
独自政治への布石
元慶の乱勃発
「一として在存(あ)るものなし」
平将門の挫折
都に入った陸奥の二人の美女
日高見へ向かった貴人
東北大戦争=前九年の役
陸奥守兼鎮守府将軍・源頼義
頼義の謀略
安倍氏の滅亡
東北大戦争=後三年の役
清原氏の内乱
新たな北方王国の誕生
終章 北方王国の消滅
奥州藤原氏の繁栄
陸奥の豊かさ
中尊寺を建立した清衡
基衡の剛胆、秀衡の叡智
義経の国外逃亡
保元・平治の乱
平家追討
守護・地頭の設置と義経追討令
藤原氏滅亡
頼朝の平泉攻め
庶民政権の始動
おわりに――日高見国の遺産
【日高見国に関わる主な出来事】
【主な参考文献】
【著者紹介】

[担当からのコメント]
多くの発掘や研究によって古代の日本は現代の私たちが考える以上に豊かで発達していたことが分かってきていますが、本書を読んでいると東北にはまだまだ埋もれている歴史がありそうだと感じます。多くの魅力が詰まった東北の歴史、その謎を本書を通じて楽しんでいただければ嬉しく思います。

[著者紹介]
中津攸子(なかつゆうこ)
1935年台東区浅草生まれ。東京学芸大学卒業、元国府台女子学院教諭。日本ペンクラブ会員・日本文芸家協会会員・俳人協会会員。『和泉式部秘話』(講談社、1997年)、『みちのく燦々』(新人物往来社、2005年)、『かぐや姫と古代史の謎』(同、1980年)、『小説松尾芭蕉』(同、1991年)、『万葉集で読む古代争乱』(同、1986年)、『怨霊蒙古襲来』(彩図社、2001年)、『風林火山の女たち』(総合出版社歴研、2007年)、『戦跡巡礼』(コールサック社、2009年)、『目で見る市川の100年』(郷土出版社、2008年)など、歴史を題材にとった評伝・小説を多く手掛ける。ほかに句集『風の道』(角川書店、1997年)。中村西湖文学賞(1998年)、市川市政功労賞(2003年)、市川市民芸術文化賞(2010年)他受賞。同人文芸総合誌『新樹』を主宰。

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