病と共に: 医師としての半生を綴る
(著) 荻田征美
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生命(いのち)とは、普段、我々は殆ど意識することはない。だが、ある日ある時、突然、自らの身を見舞う病によって、いやが上にも意識せざるを得ないのが、生命(いのち)である。『惜みなく愛は奪う』の中で、著者有島武郎は、「生命が生命に働きかける場合を情と言い、云々」と述べ、「知情意の現象を如何に科学的に探求しても、心的活動そのものを掴むことは思いも寄らない」と言及している。そして、「身体的に蝕まれ、既にその影響下にある心の中を推し量ることは至難の業である」と結んでいる。
ミシェル・フーコーは自著『精神疾患とパーソナリティ』(中山元訳、筑摩書房)の中で、「病とは自然そのものであり、そのプロセスが逆行(退行)しているだけなのである。だから病の自然史を探るには、健康な生物体の流れを遡航すれば良いことになる」として、心理学から心的影響の探索糸口を見つけるべく努力をしている。
つまり、「病」は身的にも、心的にも、異常を来した状態であることを理解しながらも、その都度、謙虚に反応を受け止めていくしかないのである。つまり、「病」ではなく「病める人」が医療の対象なのである。
私は、医師として人生の大半を過ごし、多くの患者さんと、その人の持つ病を通して、出会いを持つことができた。それらの出会いは、どれも患者さんにとっては、人生模様の一断面に過ぎない。しかし私にとっては、入院から退院までの一断面が、芝居の一幕物のように一人ひとり完結している。(本文より)
【著者プロフィール】
荻田 征美(おぎた・まさみ)
昭和16年4月14日生
学歴
昭和35年3月 夕張北高等学校卒業
昭和43年3月 北海道大学医学部卒業
職歴
昭和44年4月 北海道社会福祉法人帯広病院外科勤務
昭和46年4月 北海道大学医学部第一外科学講座研修
昭和46年10月 国立札幌病院外科勤務
昭和57年10月 足寄町国民保険病院長
昭和58年12月 国立札幌病院外科医長
平成15年4月 同院長
平成17年4月 独立行政法人国立病院機構函館病院院長
平成19年10月 同名誉院長
著書
『綾』(東京図書出版会)
『江差』(東京図書出版会)
『奇蹟』(東京図書出版会)
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