絵で読む大日本帝国の子どもたち―戦場へ誘った教育・遊び・世相文化
(著) 久保井規夫
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―「世相」として、子どもたちを意図的に取り巻いた社会情勢を体感する―
先の戦争は、なぜ起きたのか。先行する研究が一定の史料で明らかにしてきた真実は、未だきちんと説明できるだけの力を持っていない。なぜ日本国民が悲惨な戦争に加担したのかを知るためには、当時の戦争が「正義」「共栄」という「大義」のもとに、マスコミも煽った圧倒的「世論」「世相」であったことをはっきりさらけ出さねばならない――。
本書は、長く社会科教師として教育に携わってきた著者が、なぜ日本が戦争を引き起こし、国家総動員が行われ、戦争賛美の世相が罷り通ったのかを総括するために、当時の子どもたちの立場から、日本の戦争と平和の歴史を見つようと試みた作品である。学校教育や子どもたちが主体的に参加したであろう遊び、親や世間から強く影響される世相文化はどの様なものであったのか、当時の子どものおかれた立場を、教育・遊び・世相文化などの分野について、教科書や漫画、新聞、伝単(戦時宣伝ビラ)、絵葉書から玩具や音楽・団扇絵・衣服文様に至るまで、膨大な資料を渉猟し世相文化を反映しているものを分かり易い図版で纏めている。
[目次]
はじめに 皇軍兵士・軍国の母へのジェンダー
第一章 天皇(神)と小さな臣民たち
(一)天皇は主権者で、大元帥
(二)日本は「神の国」
(三)「日の丸」「君が代」
(四)「教育勅語」と報国
第二章 その頃、戦争は「格好良かった」
(一)軍国の英雄への憧れ
(二)教科書が誘う戦場
(三)戦勝だけが知らされた
第三章 遊びの中の戦争
(一)おもちゃも漫画も勇ましい
(二)戦争を楽しむゲーム
(三)勇ましくも悲しき軍国カルタ
(四)占領、戦勝が上がりの軍国双六
第四章 男子は皇軍兵士に
(一)兵隊さんは あこがれだった
(二)子ども可愛さの親心
(三)絵本に見る戦争
(四)兵隊ごっこが現実に
第五章 女子は軍国の母に
(一)母の背中で振った日の丸
(二)軍国の母として
(三)少女雑誌の戦争
(四)結婚・育児、銃後の女性
第六章 銃後を守る「良い子」だった
(一)少国民は第二の皇軍
(二)子どもたちも報国に挺身
(三)靖国の遺児の涙
第七章 「正義」の戦争の世相の下で
(一)戦争は「正義」「聖戦」とされた
(二)植民地の民衆も戦場へ
(三)「満洲」、虚妄の「王道楽土」
(四)東亜平和を口実にした日中戦争
第八章 無謀な太平洋戦争に突入
(一)緒戦の勝利に驕る
(二)「大東亜共栄」の虚実
(三)進め一億、火の玉だ
(四)悲傷、少年兵の散華
終わりに 流血のアジアを忘れないために
アジア民衆歴史センター会則
[出版社からのコメント]
戦後の日本では軍国的な教育は否定され、開かれた民主的な教育へと変わりましたが、戦前の日本が掲げた理想に民衆が感化され、その理想の中で生きていたという事実も軍国教育と共に忘れ去られているのではないかと感じます。現在の私たちが置かれている状況は、戦前の人々が置かれた状況と果たして違いがあるのか、本書を通じて今いちど考える機会を持っていただければ嬉しく思います。
【著者略歴】
久保井 規夫(くぼい・のりお)
1967年、香川大学教育学部卒業。大阪府吹田市、摂津市にて公立小中学校に教諭として勤務。吹田市同和教育研究協議会の役職など、人権・平和・教育の推進に努力し、実践・著作多数。2003年3月、退職。2007年、私立大学教員。
APHC(アジア民衆歴史センター)主宰。歴史学名誉博士。「領土教育研究会」理事長。「竹島の日」を考え直す会理事長。
書作に、「図説 食肉・狩漁の文化史」「図説 病の文化史」「絵で読む大日本帝国の子どもたち」「絵で読む紫煙・毒煙・大東亜幻影」「わかりやすい日本民衆と部落の歴史」「入門日本民衆の歴史」「日本民衆の歴史と朝鮮」「江戸時代の被差別民衆」「近代の差別と日本民衆の歴史」「図説 朝鮮と日本の歴史 光と影」「地下軍需工場と朝鮮人強制連行」「図説 日本の侵略戦争とアジアの子ども」「戦争と差別と日本民衆の歴史」「教科書から消せない歴史」「消され、ゆがめられた歴史教科書」「図説 竹島=独島問題の解決」等がある。
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