蜘蛛の巣の意匠:メタファーから読み解くアメリカ作家の創造性
(著) 岩瀬悉有
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―蜘蛛のメタファーから紡ぎ出されるアメリカという文化―
19世紀のアメリカ文学作品には、作家独自の文化観や人間観、世界観が仮託されたいくつかの大きな象徴を見てとることができる。それらは、それぞれの作家の表現技法でありながらアメリカ文化を透徹するような類の象徴であり、新たな社会と文化を理解し腑に落とそうとする作家独自のブリコラージュとして捉えることができる。そして、このようなアメリカ作家の特徴的な思考方法、文化を形成しようとする根本的な衝動を明らかにする重要な象徴として、本書では蜘蛛のメタファーに着目し、20世紀のモダニズムの時代までを一つの区切りとして、新たな視点からのアメリカ文学史、ないしは文化史へのアプローチを試みる。
[目次]
序章
第Ⅰ部 蜘蛛の詩から
一 エドワード・テイラー
1 蜘蛛と人と神と
2 織ることと書くこと
二 エミリー・ディキンソン
1 闇と「光の大陸」
2 自然を読む
三 ウォールト・ホイットマン
1 岬の蜘蛛
2 「聖なる三位一体」
四 ロバート・フロスト
1 「暗闇の意図」
2 「輝く水晶洞」——人間と自然の交流——
五 ウォーレス・スティーヴンズ
1 光と海——見ることと作ること——
六 ロバート・ローウェル
1 ローウェルと蜘蛛
2 死ぬ意味があるのか
七 蜘蛛の巣の意匠——三つの詩から——
1 自我をめぐって
2 蜘蛛の巣の外へ
3 自我の同定
4 蜘蛛の巣の限界
第Ⅱ部 蜘蛛の詩——その構造的スケッチ——
第Ⅲ部 蜘蛛のイメージによる変奏
一 ナサニエル・ホーソーン
1 グリムショウ博士の秘術
2 セプティミアス・フェルトンの薬草学
二 ヘンリー・ジェイムズ
1 アダム・ヴァーヴァーの「審美眼」
2 芸術家としてのアダム・ヴァーヴァー
三 ヘンリー・アダムズ
1 マネキン人形から蜘蛛へ——『ヘンリー・アダムズの教育』——
四 三人の織り手——比較の試み——
五 子供の想像力のなかで
終章
参考文献
初出一覧
あとがき
[出版社からのコメント]
文学においては作品をどの様に読み解くかは読者に委ねられていますが、その一方で読者の恣意的な解釈を超えるほどの作家の創造性に出会うこともあります。文学の楽しみが作家の創造性に触れることであるならば、本書で展開されるアプローチを通じて、一つの時代のアメリカ文学の楽しみを味わっていただけるのではないかと思います。
[著者プロフィール]
岩瀬 悉有(いわせ・しつう)
1935年兵庫県生まれ
関西学院大学教授
大阪市立大学大学院,文学研究科修士課程を修了。専攻はアメリカ文学。
ヘンリー・ジェイムズ,T.S.エリオット,アメリカ詩人たちに関する論文がある。
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